21/11/28

驚くくらいに給料が増えない件について

岸田さんが経団連に対して3パーセントの賃上げを要請したことがニュースになっているけれど、何年か前に安倍さんも同じように賃上げを要請していたことを思い出す。総理自らが民間企業に賃上げを要請しなければならないほど、日本の給与所得はずっと低迷したままということだ。ほかの国では着実に増えているのに、ずっと横這い状態なのは日本くらいのものだ。



自分の場合も、給料はずっと低いままだ。いまの給料は、社会人5年目のときの給料と同じくらいだ。つまり、30年近く前の給料と同じ水準ということになる。もちろん、翻訳という斜陽産業に転職したからという事情もあるけれど、それにしてもひどい。27歳のときと54歳になったいまと比べて、給料がまったく増えていないのだ。フリーターだって、30年近く働けば多少は時給も上がるだろうに。

自分の職歴について簡単に振り返ってみると、新卒でIT企業に就職して5年間システムエンジニアとして勤務し、その後6年間フリーのシステムエンジニアとして働き、翻訳業界に転職していまにいたる、という感じだ。フリーで仕事をしているときに何社か勤務したので、これまでに勤務した会社をすべて合計すると、10社くらいにはなると思う。

いまから思うと、新卒で入社した会社はいい会社だった。仕事はけっこうぬるい感じなのに、給料や福利厚生などの待遇はかなりよかった。ただ、SEという仕事が自分にはどうしようもなく向いていなくて、翻訳業界に転職することを目指してフリーになった。この決断については、まったく後悔していない。あのままSEとして仕事を続けていたとしたら、いまごろ精神を病んでいると思う。

フリーになったら、精神的にはかなり楽になった。人材派遣会社に登録して派遣社員として勤務するという形だったので、正社員として仕事をするよりも責任感という点においてかなり楽だった。給料としてはそれほど高くなかったけれど、正社員だった頃に比べたら多少は増えた。最初は勝手がわからなかったので、派遣会社の言い値で契約したのだけれど、それほど低いということもなかった。

それから派遣先が変わるたびに交渉のコツみたいなものを覚えて、単価は徐々に上がっていった。最終的には、派遣会社を通さずに派遣先の会社と直接契約したので、けっこうな給料をもらうことができた。このときが、自分史上における最高年収だった。といっても、まったく大したことはない。中小企業の課長とか次長とか、それくらいのレベルだと思う。フリーという立場で考えた場合、正社員の倍くらい稼いでようやくトントンだと思う。

それから翻訳業界に転職したわけだけれど、当然ながら年収は激減した。半減とまではいかないけれど、3分の2くらいには減った。ただ、SE時代に比べて本当に精神的には楽になったので、転職して大正解だったと思っている。年収としては3分の2に減ったけれど、精神的な負担は10分の1とか20分の1くらいになったので、トータルで見ればものすごくプラスだ。

翻訳者としてのキャリアはいまの会社で3社目だけれど、翻訳業界に転職してから給料としてはほとんど変わらない。それは、いまの会社に転職してからも同じだ。イギリスに本社がある外資系の会社なので、日本の会社のように定期昇給というシステムはない。昇給するには、なにかしらの成果を上げてアピールする必要があるらしい。自分はそういうのが本当に苦手なので、このままでもいいかなと思っていた。

ただ、物価や税金は上がるのに給料は据え置きというのでは生活が苦しくなるばかりだと思い、去年の今頃、「ちょっとだけでも給料を上げてもらえませんか?」と上の人間に打診してみた。「上の人間」というのは、イギリスの本社にいる人なので、英語でメールを書かなければならず、ちょっとめんどくさい。いまの会社は本当にケチな感じなので、昇給のお願いメールもきっと黙殺されるんだろうなと思っていたら、意外にも希望が通ったので驚いた。もしかしたら、自分は評価されているのかもしれない。

もちろん、昇給したとはいっても微々たるものだけれど、元々の給料が少ないので、わずかではあっても給料が増えるというのはやっぱりうれしい。幸福度がピークになるのは年収600万円とか700万円だという調査結果があるらしいけど、自分の場合はもっと低いかもしれない。あまりにも薄給に慣れすぎてしまっているので、年収600万円とかだったら、うれしすぎてどんな感じで生きていけばいいのかよくわからない。



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