21/11/21

冬の部活動

前回は、4回目の昇段試験でようやく黒帯になることができたというところまで書いた。本当に「ようやく」という感じで、いきなり2戦連続引き分けというまさかの展開で「終わった・・・」と思ったのだけれど、そこから4連勝してなんとか昇段することができた。念願の黒帯を獲得してからというもの、さらに練習にも熱が入った。弱いながらも一応は部長なので、部員たちを引っ張っていかなければならないという思いもあった。

なんていうのはもちろんウソだ。辛いことや面倒なことが大嫌いで、スキあらばすぐに逃げようとする自分が、そんな殊勝なことを考えるわけがない。逆に、冬の稽古はとにかく寒くてイヤだったので、部長権限で冬の間は自主練習ということにしたのだ。道場には空調なんて入っていないから、冬は畳がものすごく冷たくて、本当にイヤだった。練習を始めてしばらくすれば体が温まってくるけれど、それまでの時間が辛い。

なので、冬の間は自主練習という名の部活休止という改革を断行した。それまでの佐渡高校柔道部の歴史において、こうした大きな改革に踏み切った部長はいなかったのではないだろうか。そういう意味では、自分は佐渡高校柔道部の歴史に名を遺す部長だったのではないかと思う。なにしろまったく部活動をしないわけだから、いま考えてみても大英断だったと思う。

このことについて、顧問の先生に相談したり許可を得たりとかは一切なく、すべて自分の独断だ。というか、部員たちも冬の練習は大嫌いだったから、反対意見が出るはずもなく、冬の部活休止はすんなりと決まった。顧問の先生がどう思っていたのかは知らないけれど、普段の練習にもほとんど顔を出すことはなかったので、「別にどうでもいい」くらいの感じだったのではないかと思う。

ただ、たまにOBが練習に顔を出すことがあったので、そういうときには部員たちに「全員集合!」の招集をかけていた。OBが来るときには、どこからともなく事前に情報が入るので、さすがにそのときには真面目に練習しているフリをしてOBを歓迎した。表向きは歓迎していたけれど、心の中では「別に来なくてもいいのに、なぜ偉そうな顔をして練習に参加したがるのだろう」なんてことを考えていた。我ながらクソみたいな部長だ。

ということで、部活を休止したことによって時間に余裕が生まれたので、その時間を勉強に充てることにした。3年生になればもう受験はまったなしだから、そろそろ受験のことを意識しなければならない時期にきている。というか、難関大学を目指すのであれば、すでに本格的な勉強を始めていなければならないくらいだ。自分も当時は東北大学が第一志望だったので(いまから思うと絶対に無理だったけれど)、この機会に真剣に勉強を始めることにした。

なんていうのはもちろんウソだ。この頃は受験のことなんてほとんど考えていなかった。なんとなく「東北大学に行きたいな」くらいのことは考えていたけれど、まだ2年生だし、時間はたっぷりあると思っていた。では、部活を休止して何をしたかというと、麻雀の勉強を始めた。当時は、やんちゃな感じのヤツらの間で麻雀が流行っていて、自分も麻雀をやってみたいと思っていたのだ。なので、適当な本を買って役と点数計算を独学で勉強した。

一通りルールを覚えたら、後は実戦あるのみということで、いつも麻雀を打っているやんちゃグループの仲間に入れてもらって麻雀を打つようになった。まさか高校生が雀荘で打てるはずもないので、いつも麻雀仲間の下宿に集まって打っていた。だいたいは、授業が終わってから夕食までの間に半荘1〜2回打つくらいだったけれど、週末に徹夜で打つこともあった。

賭けるお金としては本当に少額で、半荘1回で動くお金は数百円程度だった。ただ、自分たちとは別のグループだったけれど、高校生としては分不相応な金額で麻雀を打っていたヤツらもいて、総額で数万円単位のやり取りがあったらしい。もちろん、一晩で数万円が動くということではなく、何回かの勝負を重ねた結果として数万円が動いたということだけれど、当時の高校生にとって数万円はものすごい大金だ。

ということで、冬の部活動を休止して得たものは麻雀ということになった。こうして書いてみると、なんともひどいなと思う。部活動を休止するだけでもどうかと思うけれど、それで空いた時間を勉強に充てるならまだしも、麻雀に夢中になるなんてどうかしている。ただ、春になったらしっかりと部活動を再開したので、そのあたりは柔道部の部長としての自覚はわずかながらもあったのだと思う。



今週の覚書一覧へ

TOP


inserted by FC2 system