21/09/12

昇段試験の思い出(続き)

前回は、夏の昇段試験で黒帯になれなかった自分を含めた3人が「裏口入学」的な方法で黒帯獲得を目指し、自分以外の2人は見事に昇段したけれど、自分は残念ながら昇段できなかったというところまで書いた。中学生ばかりのグループに入ることを期待していたのに、すべて自分より体が大きい高校生ばかりのグループに入ってしまい、1敗3分けという情けない結果になってしまった。

もちろんこの結果には大いに落胆したけれど、夏の昇段試験では4戦全敗でオール一本負けだったことを考えれば、1敗3分けという結果は成長していると言えなくもない。ただ、これまで1回も勝てていないというのも事実だ。勝てないどころか、「有効」ポイントでさえ1回も取ったことがないのだ。なので、どうしたら試合に勝てるのかというイメージさえつかめないような状態だった。

そんな感じだから、新潟市で行われた昇段試験からいくらも経っていない時期に臨んだ冬の昇段試験も、正直なところ黒帯になれる自信はほとんどなかった。ただ、春になれば新入部員が入ってくるわけだから、上級生で自分だけが白帯というのはなんともカッコ悪い。部内では自分が最弱という自覚はもちろんあったけれど、後輩に帯の色で明確に実力差を知られてしまうというのは、ちょっと(というかかなり)イヤだった。

なので、自分なりに気合を入れて臨んだわけだけれど、残念ながら2敗2分けという結果に終わった。このときも、有効ポイントさえ取れなかった。引き分けになった試合にしても、自分の方が押していたというような試合内容ではなくて、負けるのだけはイヤだからなんとか引き分けに持ち込んだ、みたいな試合内容だったと思う。つまりは、相変わらず弱いままということだ。

これで、白帯のまま新入部員を迎えることが確定してしまったわけだ。自分以外にも白帯仲間がいればまだしも、部内で白帯は自分だけなので、余計にカッコ悪い。実際に、春になると黒帯の1年生Y君が入部してきて、なんとも居心地の悪い思いをした。Y君は自分より2階級上で体もごつく、顔も1年生とは思えないくらいにオッサンっぽかったので、最初から圧倒されてしまった。実際に強かったし。

ただ、まったくの初心者という新入生もいたから、さすがにそういう1年生相手なら乱取りで負けることはなかった。乱取り稽古は3分を1回として次々に相手を変えていくのだけれど、実際の公式戦も3分だったので、実戦を意識しながら練習することになる。初心者が相手だと乱取りで自分の技が決まることも増えてきて、「いまのは有効くらいあるかな」とか、「いまのは間違いなく一本だな」などと考えるようになった。

当時の乱取り稽古のシステムは、上座に上級生(というか、実力が上の部員)が並び、下座に下級生(というか、実力が下の部員)が並んで稽古を始める。3分が経過すると、下座の部員が左にひとつずれて乱取りを再開する。上座の部員の位置は変わらない。つまり、上座の部員の位置は固定で、下座の部員がローテーションしていくというシステムだ。

なので、強い人同士が乱取りをしたり、弱い人同士が乱取りをするというケースはほとんどなかったということになる。いまから考えてみると、このシステムってどうなんだろうか。もちろん、実力差が離れている相手と乱取りをするメリットもあるのだろうけれど、実力が拮抗している者同士が乱取りをしたほうがメリットは多いような気がするけれど、当時はそういうシステムだったのでしかたない。

柔道部内で実力が最弱だった自分は、当然ながら常に下座でローテーションを余儀なくされたわけだけれど、春になると新入部員が多く入ってきて、上座部員の要員が一時的に不足することがあった。先輩が部活を休んだりしたときに、自分が上座に立つことがたまにあったのだ。そういう機会に1年生と乱取りをして「よし、いまのは有効だな」とか「いまのは一本だな」みたいに、試合で勝つイメージを養うことができた。

ただ、1〜2か月もすると、練習のキツさに音を上げて部をやめてしまう1年生が何人かいたので、自分はまた下座要員に逆戻りしてしまった。しかし、乱取り稽古中に頭の中で実戦をシミュレーションすることができたので、少しずつではあるけれど手ごたえみたいなものもつかめてきた。この調子ならば、今度の昇段試験で念願の黒帯を獲得できるかもしれないと思った矢先に、練習中に鎖骨を折るという事態になってしまった。

不幸中の幸いというべきか、折れたのは左の鎖骨だったので、右利きの自分としては、なんとか自分の力だけで日常生活を送れる感じではあったけれど、夏の昇段試験で何人かの後輩が黒帯を獲得して、自分の焦りはさらに深くなってしまった。その後、個人戦で優勝して県大会でもベスト16に入ったことはすでに書いたけれど、その時点でもまだ白帯のままだった。今度こそ必ず黒帯を取ると決めて臨んだ2年生の冬の昇段試験の結果については、また次回。



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