21/08/01

オリンピックの柔道を観戦して思ったこと

オリンピックが開幕してからというもの、一日中テレビで観戦している。自国開催だから時差を気にすることもないし、在宅勤務も絶賛継続中なので、これほどテレビ観戦に適した環境はない。いや、もちろんちゃんと仕事はしてますよ。本気を出せば普通の人よりもかなりのスピードで作業できるから、仕事にはまったく問題はない。午前中に集中して仕事すれば、一日分の作業量はさばける。

ということで、柔道については、男女ともに予選から決勝まで、ほとんどの試合を観戦した。自国開催とはいえ無観客での開催になってしまったから、日本の選手にとってあまりアドバンテージはないのかもしれないと思っていたけれど、少なくとも柔道に限ってはそんなことはなく、非常に素晴らしい結果を残すことができた。最後の団体戦で有終の美を飾れなかったのは残念だったけれど。

今回の素晴らしい結果の要因として考えられるのは、自国開催ということもあるだろうけれど、一番大きいのはルールが改正されたことだと思う。技のポイントとして「有効」が廃止されて「一本」と「技あり」だけになり、指導の数で勝敗が決まることもなくなり、制限時間内で決着がつかない場合はどちらかがポイントを取るまで延長されるというルールになった。簡単に言うと、ものすごくわかりやすいルールになった。

これまでのルールでは、指導の数の差で勝敗が決まるケースがかなりあり、露骨に指導を狙ってくる外国人選手もいたりして、なんともスッキリしない試合が少なくなかった。その典型例が、リオ五輪の男子100キロ超級決勝戦だ。絶対王者と呼ばれるフランスのリネール選手に日本の原沢選手が挑んだのだけれど、指導の数で1つだけ勝っていたリネールは試合の終盤になるとまったく組み合おうとしなかったのだ。この試合からリネールのことが大嫌いになった。

しかし、今回のルール改正により、指導の数についてはあまり気にしなくてもよくなった。もちろん、指導が3つになるとその時点で反則負けになるから、まったく気にしなくてもいいというわけではないけれど、これまでに比べたら、試合における指導の重要度は格段に下がったことは間違いない。ほとんどの試合が技のポイントで決着するので、観戦するほうとしても楽しい。

判定については、「え、どうしてそうなるの?」と言いたくなるようなおかしなものもいくつかあったけれど、これまでに比べたらかなり妥当な判定になってきたと思う。これは、ビデオ判定を導入したことが大きい。レベルの低い審判に当たったりすると、技のポイントを正しく判定してもらえないことも多かったけれど、ビデオ判定の導入によってそうしたミスジャッジはかなり減った。ただ、ビデオ判定が多すぎて、そのたびに試合が中断されるというのは、選手にとってどうなんだろうかとは思うけれど。

自分は、ロス五輪から柔道の試合を観戦してきたけれど、当時に比べたら選手のレベルも格段に上がっている。なにしろ当時は、試合を始める前に、開始線の前に立って一礼するという当たり前の動作でさえまともにできないような外国人選手が多くて驚いた記憶がある。なので、今大会の外国人選手の所作などを見ると、隔世の感を覚えてしまう。

今回の素晴らしい結果の要因としては、井上監督の指導力も非常に大きいと思う。ロンドン五輪で男子柔道が金メダルゼロという結果に終わったときには、「日本柔道はこのまま低迷してしまうのかな」と思ったけれど、次のリオ五輪では男子柔道で金メダルを2つ獲得した。これは、井上監督の指導力のおかげだと思う。井上監督はこれで任期終了ということになるらしいけれど、個人的にはこれからもずっと全日本の監督としてやってほしい。

それにしても、圧倒的な力の差を見せつけて勝つだろうと思っていた大野選手でさえ、決勝戦はかなり苦戦したので、やっぱりオリンピックというのは特別な舞台なんだろうと思う。そんな中で、自分が驚いたのが女子78キロ級の濱田尚里選手だ。何がすごいって、とにかく寝技がすごい。すべての試合を寝技で決めたのだけれど、とにかく圧倒的な強さで、1試合あたりの平均時間が2分かかっていないのだ。

柔道の試合はこれまでにたくさん見てきたけれど、これほど寝技が強い選手はちょっと記憶にない。今大会のMVPを投票で選ぶとすれば、ルックス的に華がある阿部兄妹や侍の雰囲気を持つ大野選手などが人気を集めるだろうけれど、自分は絶対に濱田選手を推す。最初から寝技を狙って、そのとおりに寝技で勝ちきることができるというのは本当にすごいと思う。



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