21/06/27

県大会の思い出(続き)

ということで、無事に計量をパスして県大会の個人戦に出場することになった。トーナメント表はすでに前日の段階で会場に貼られていて、それを確認したところ、自分がシードされていたのでちょっと驚いた。まあ、各地区の優勝者を機械的にシード枠に当てはめているだけだろうから、自分の実力が評価された結果のシードということではないけれど、やっぱり自分がシード選手になるというのは悪い気はしない。

この段階では、自分はまだ白帯だったけれど、顧問の先生の計らいで、県大会には黒帯で出場した。大会のプログラムを見たときに、自分の段位が「初段」と記載されていたので、先生に確認したところ、「お前には十分に初段の実力があるから、自信を持って黒帯として出場しろ」と言ってもらえたので、多少後ろめたい気持ちはあったけれど、ありがたく黒帯を締めて出場することにした。

県大会ともなると、最軽量級でも白帯なんてほとんどいないから、正直なところ、「白帯で出るのは恥ずかしくてイヤだな」と思っていた。顧問の先生は、大学まで柔道を続けて四段という実力だったから、柔道の素人が適当に励ますような感じで「お前には十分に初段の実力がある」と言ったのとはわけが違う。白帯と黒帯とでは見た目の威圧感が天と地ほども違うから、この配慮はありがたかった。

試合前は特に目標があったわけではないけれど、機械的な仕組みとはいえせっかくシード枠に入れてもらったのだから、初戦くらいは勝ちたいと思った。シード選手なのに初戦で負けてしまうというのは、ちょっとカッコ悪い。ただ、シード枠ということは、すでに一回戦を勝ち上がってきた相手と戦うことになるわけだから、初戦を突破するのは簡単なことではない。

試合が始まって組み合ってみると、それほどの威圧感はない。柔道に限らずどんな格闘技でもそうだと思うけれど、最初のファーストコンタクトで、強い相手なのかどうかというのはだいたいわかる。「あ、コイツはそれほどでもないな」と感じた相手にはかなりの確率で勝てるし、「あ、コイツは強いな」と感じた相手にはまず間違いなく負ける。このときの相手には、「あ、コイツは強いな」という感じはなかったので、チャンスはあると思った。

試合の序盤はお互いの出方を探るような感じだったけれど、最初の直感どおりに、相手の実力は自分と同じくらいでたいして強くないことがわかったので、積極的に攻めていくことにした。試合の中盤でかけた背負い投げで「有効」のポイントを取ったときには「よっしゃあ!」と思ったけれど、ポイントを取った瞬間に「このポイントを守り切ろう」という考えが出てくるのが自分のダメなところだ。

そんな感じで、ポイントを取ってからはかなりディフェンシブになったけれど、あまりにも消極的になると反則を取られてしまうので、「ポイントは取ったけれど、まだまだいきまっせ!」みたいな見せかけの積極性をアピールしながら試合を進めていった。ただ、そういう中途半端な姿勢がいけなかったのだろう、試合の終盤で相手の体落としに身体が浮いてしまい、畳の上に転がされてしまった。

その瞬間に、「しまった、有効ポイントを取られた
」と思ったのだけれど、ラッキーなことに主審は無言のままだった。2人の副審からも何のアピールもなく、そのまま試合が進み、無事に背負い投げの有効ポイントで優勢勝ちを収めることができた。もしあの体落としで有効ポイントを取られていたら、中盤以降のディフェンシブな姿勢がマイナスに評価され、判定で自分が負けていたと思う。いま考えても、本当に薄氷の勝利だった。

次の試合は、本当に「あっ」という間に終ってしまった。組んだ瞬間に、「あ、コイツは相当強いな」と感じたのだけれど、その印象通りにあっという間に負けてしまった。ちょっと動き回って揺さぶろうと思ったのだけれど、不用意に両足が揃ったところを足払いで一本を取られてしまったのだ。同じ階級の相手に足払いで一本負けしたのは初めてだったので、悔しいというよりもちょっと驚いた。というか、自分のあまりの弱さにちょっとだけ笑った。

試合前は、「これに勝てば県大会ベスト8だから、少しは自慢できるな」なんて考えていたけれど、そんな妄想はあっさりと打ち砕かれてしまった。この試合が終わってからすぐに会場を出たので、個人戦の結果は確認していないけれど、自分の希望としては、このときの相手が優勝しているといいなと思っている。ということで、個人戦の結果はベスト16という、無理すれば自慢できなくもないけれど、自慢したらおそらくツッコミがはいるという、なんとも微妙な感じになってしまった。



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