21/06/20

行列の功罪

ラーメンが大好きな自分は、狛江市に引越してきてからというもの、いろいろなラーメン屋に出かけて食べているのだけれど、いまだに「これは!」という店に出会えていない。千葉に住んでいた頃は「竹岡系」というラーメンにはまっていて、傾向的には「八王子ラーメン」に少し似ているので、何軒か八王子ラーメンの店で食べてみて、けっこう美味しいお店は見つけたけれど、何度もリピートするほどではない。



そんな感じで、いまだに「行きつけ」のお店を見つけようとラーメン屋めぐりをしている。この前テレビを見ていたら、ものすごく個性的なラーメン屋が紹介されていたので、ものすごく興味をひかれた。超濃厚なトンコツラーメンのお店なのだけれど、一般的に想像するような白濁したスープではなくて、ビジュアルとしては味噌ラーメンに近い。というか、普通の味噌ラーメンよりも濃くて、チョコレート色に近いくらいの感じだ。

若い頃は濃厚なラーメンが大好きで、家系ラーメンばかり食べていた時期もあったけれど、最近では歳のせいなのか、どちらかと言えばあっさり系のラーメンを食べることが多くなってきた。しかし、テレビで見たそのラーメンは、あまりにもビジュアル的なインパクトが強かったので、どうしても食べてみたくなった。ということで、実際に食べてみることにした。

事前に食べログで調べてみたところ、店内はカウンター席が6つしかないという小さなお店で、常に行列ができているということだった。自分はものすごくせっかちな性格なので、普段なら列に並んでまで食べたいとは思わないのだけれど、そのラーメンだけはどうしても食べてみたかったので、最も混むであろう開店直後の時間帯をあえて外して、14時くらいにお店に向かった。

その日は雨が降っていたから、「お昼時を外せば並ばずに済むだろう」と考えていたのだけれど、甘かった。店の前にはすでに20人くらいの行列ができていたのだ。その行列を見た瞬間に、「このままUターンして帰ろうかな」とも思ったけれど、せっかく雨の中をわざわざ電車賃を使って来たのだから、このまま帰るというのもなんだか悔しいので、列に並ぶことにした。

ラーメン屋の場合、ほかの飲食店に比べれば回転は速いので、それほど待たずに入店できるだろうと考えていた。列に並ぶのは好きではないけれど、雨の中でもこれだけの人が列を作っているということは、それだけ熱狂的なファンが多いということだから、味については間違いなく期待できるだろう。そう考えれば、少しくらい待つのも楽しいかもしれない。

最初こそ、そんなことを考えていたのだけれど、一向に列が進まない。最初は、「けっこう並んでいるけど、せいぜい30分も待てば入れるだろう」と思っていたのに、30分待っても自分の前にはまだ10人くらいが並んでいる。とにかく、ラーメン屋としては驚くくらいに回転が遅いのだ。相当にイライラしたけれど、すでに食券も買っているし、せっかく30分も待ったのだから、ここで帰るものなんだかもったいないしで、そのまま我慢して立ち尽くしていた。

ようやく店に入ったときには、列に並んでから90分が経過していた。飲食店で90分も列に並んで待ったことは、これまでの54年の人生においてただの一度もない。おとなしく90分も待ったことがあるのは、ディズニーランドの人気アトラクションくらいのものだ。そう考えてみると、ラーメンくらいでよくおとなしく待ったものだと思う。というか、どう考えても待たせすぎだろう。店側のオペレーションに問題があるとしか思えない。

肝心のラーメンの味はというと、とにかく強烈な味のラーメンだった。いままでいろんなラーメンを食べてきたけれど、そんな自分にとっても未体験の味で、とにかく強烈に個性的なラーメンだった。「美味いかまずいか」の二択で訊かれたら、かなり返答に迷うような味だ。「まずくはないけれど、強烈すぎて当分は食べたくない」という感じだろうか。はまる人には強烈にはまる味なのかもしれない。

ただ、行列に並んでいる時間がもっと短かったら、味の印象ももっと変わっていたような気がする。なにしろ待たされすぎたので、ラーメンを食べるときには「楽しみだな」という気持ちを通り越して「やれやれ、ようやくかよ」みたいな感じになっていたので、そういう気持ちが味に大きく影響した部分はあると思う。少し待つくらいなら、かえってスパイスになるけれど、待たされすぎるとマイナスの効果にしかならないということを今回の件で学習した。



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