21/06/13

県大会の思い出

前回は、県大会で個人戦3位という実績を持つT君に勝って佐渡地区の個人戦で優勝したところまで書いた。佐渡地区の個人戦で2位までに入ると県大会に出場できるという仕組みになっていたので、自分も県大会に出ることになった。その日まで公式戦で一度も勝ったことがなかったのに、いきなり個人戦で優勝して県大会に出られるなんて、いったいどうなっているのだろうか。

新潟県は、上越地区、中越地区、下越地区、佐渡地区、新潟市地区という4つの地区に分かれていて、それぞれの地区大会でベスト8に入ると県大会に出られるという仕組みになっていた。ただし、佐渡の場合は出場選手の数が少ないため、県大会の出場資格は上位2名までになっていた。なので、個人戦は総勢34で戦うことになる。県大会は2日にわたって開催され、初日が団体戦で、2日目が個人戦だった。

団体戦についても、佐渡地区の場合は上位2校に出場権が与えられる。たしか、そのときの大会では2位になったような記憶があるから、自分は県大会の団体戦でも戦ったはずなのだけれど、まったく覚えていない。団体戦の場合、3校が予選でリーグ戦を行い、そこで1位になった学校が決勝トーナメントに勝ち上がるという仕組みになっていた。団体戦のことをまったく覚えていないというのは、自分は予選の2試合とも負けたか引き分けたかしたのだろう。

ただ、団体戦の決勝トーナメントのことは強烈に覚えている。予選リーグで負けた自分は、観客席から決勝トーナメントを見ていたのだけれど、5人全員がほぼ秒殺で勝つという、ものすごく強い高校があった。相手の高校だって予選リーグを勝ち上がってきたわけだからそれほど弱くはないはずなのに、まさに大人と子供という感じだった。なにしろ、組み合ってからわずか数秒で「一本!」という一方的な試合が最初から最後まで続いたのだ。

その圧倒的な強さを目の当たりにして、「こりゃあ、この高校が優勝するに違いない」と思い、次の試合でもその高校のことを注目していたのだけれど、意外なことに、その高校は次の試合でけっこうあっさりと負けてしまった。前の試合があまりにも強烈な勝ち方だっただけに、この結果には本当に驚いた。そのときに、「上には上がいる」という言葉を心底実感した。

そんな感じで初日を終えて宿に泊まることになった。宿泊のお楽しみといえば、なんといっても食事だ。柔道部所属の高校生男子なんて食べることが仕事みたいなものだから、当然みんなよく食べる。しかし、それは計量を気にする必要がない場合であって、翌日に計量を控えている自分としては、みんなと同じように無邪気に食べまくるわけにはいかない。

地区大会では、田舎特有のゆるさに助けられて、800グラムオーバーくらいでも大目に見てもらえたけれど、さすがに県大会になるとそういうわけにはいかない。先輩からも、「県大会の計量はシビアだ」という話は聞いていたので、今回ばかりはキッチリと55キロ以下に落とさなければならない。目の前に出されたおいしそうなご馳走の誘惑に負けて明日の試合を棒に振るわけにはいかないのだ。

ということで、宿での夕食はかなり我慢したような記憶がある。まあ、その日の夜は腹が減って眠れなかった、みたいな記憶はないので、それなりにしっかりと食べたのかもしれないけれど、少なくとも「欲望のままにおかわりしまくった」ということはない。高校2年の修学旅行のときには、欲望のままにおかわりしまくって、腹がはちきれんばかりに食べた記憶があるけれど。

次の日の朝食も、かなり控えめに食べたような気がする。佐渡の大会では、午前中に団体戦があり、その直後に計量をして昼食を摂り、午後から個人戦というスケジュールだったから、朝食後の時点で体重が多少オーバーしていても、午前の団体戦でたくさん動けば体重が減るだろうという計算ができたけれど、県大会ではいきなり計量なので、体重を減らすヒマがない。

そんなこんなで、体重計に乗るときには思わず息を止め、できるだけ「そーっと」乗ったことを覚えている。別に、そーっと乗っても乱暴に乗っても体重は変わらないのに、なぜかそーっと乗ってしまう気持ちはわかってもらえると思う。そーっと乗ったおかげなのか、無事に計量をパスして個人戦に臨むことになった。書いているうちにいろいろと思い出してしまい、なんだかまとまらなくなってきたので、続きはまた今度。



今週の覚書一覧へ

TOP


inserted by FC2 system