21/04/11

柔道についてさらに語ってみる

前回の覚書では、高校で柔道部に入ろうと考えた理由について書いてみた。簡単に言えば、「たいして運動神経もよくないし、体も小さい自分がそこそこ活躍できるとしたら、階級別になっている柔道しかない」という理由で柔道部に入部しようと思ったわけだ。それと、お金がかからないというのも大きな理由だった。なにしろ、柔道着さえあればいいのだから、これほど安上がりなスポーツもないだろう。



高校に入学したときの自分の体格は、身長が158センチで体重が48キロくらいだったと思う。ようやく成長期に入ったという感じで、高校生にしては小さかった。新入部員は自分を含めて7人いたと思う。自分と同じくらいの体格のヤツが一人いたけれど、そいつは運動神経抜群で、きれいなバク宙をクルクルと何度もできるようなすごいヤツだった。なので、自分と同じ柔道未経験者だったけれど、すぐに強くなった。

先輩部員は、2年生が3人で、3年生が4人だったと思う。自分が入部する前の年が史上最強の柔道部で、県大会で優勝して全国大会に出場したくらいに強かった。そのときはたまたま強いメンバーが集まっていたということらしく、自分が入部したときの先輩たちは、全国大会出場のメンバーに比べたら、実力的にはかなり下だったのではないかと思う。

そうはいっても、体も小さくて柔道未経験の自分にとっては、先輩たちはめちゃくちゃ強かった。練習のメニューとしては、柔軟体操から始まり、打ち込み(技の掛け方を練習すること)、寝技の乱取り、立ち技の乱取りという形で進んでいく。平和な感じなのは打ち込みまでで、寝技の乱取りになると、先輩たちにいいようにやられる。寝技には、抑え込みだけでなく絞め技や関節技もあるから、痛かったり苦しかったり重かったりで、本当に散々な感じで痛めつけられる。

寝技が終わると、次は立ち技の乱取りが待っている。寝技の場合は、ほぼすべての時間をマウントを取られた状態で過ごすことになるわけだけれど、立ち技の場合は、終始投げられっぱなしということになる。もちろん、初心者の自分に対しては先輩たちも手加減してくれたけれど、寝技にしても立ち技にしても、ずっと一方的にやられっぱなしというのはかなりキツい。

マンガやドラマだったら、いつも投げられっぱなしだった先輩に対してある日突然きれいな背負い投げを決め、そこから急激に強くなっていく、みたいな展開になるのだろうけれど、残念ながら自分の場合は、そんなドラマチックな展開にはならなかった。毎日ひたすら先輩たちにいいように遊ばれるばかりで、まったく強くならなかった。なので、部活の時間になるのがイヤでイヤでしかたなかった。

昼休みが終わって5時間目の授業くらいになると、「ああ、今日もまた部活に行かないとな、でも行きたくないな、柔道部に入って失敗したな、本当に行きたくないな」みたいなことばかり考えていた。そんなにイヤなら、部活をやめてしまえばいいだけの話だけれど、入ったばかりの部活をやめてしまうというのはさすがにカッコ悪いような気がして、なんとか頑張ってみようとは思っていた。

それに、入部していきなり先輩たちにバリカンで丸刈りにされてしまったというのも、部活をやめたくないという理由だった。入部してから一週間くらいした頃だったと思うけれど、練習が終わった後で一年生が全員呼ばれて、部室にあったバリカンでいきなり丸刈りにされてしまったのだ。自分はそれまで丸刈りにしたことなんてなかったので、ちょっとショックだったけれど、これは柔道部の伝統だということなので、おとなしく従った。

その翌日は、丸刈りの頭で教室に入るのがものすごく恥ずかしかった。案の定、丸刈り頭の自分が教室に入ると、周囲から好奇の視線が注がれたけれど、同じように丸刈り頭の野球部の男子が、「おお、きれいな丸刈りだな」みたいな感じでいじってくれたので、あらかじめ用意しておいたクシを胸ポケットから取り出して髪をとかす仕草をしながら、「そう、似合う?」みたいな感じでボケたら、周囲の女子たちも狙い通りに笑ってくれたので、それで吹っ切れた。

なので、ここまで恥ずかしい思いをしたわけだから、このままやめるわけにはいかないという気持ちがあった。このまま柔道部をやめたら、練習でいいように遊ばて、その上バリカンで丸刈りにされたままで終ってしまうわけだ。さすがにそれってどうなんだろうということで、少しくらいはやり返せる自分に成長したいと思って柔道を続けることにした。

ということで、最初は柔道について簡単に書いて終わるつもりだったのに、書き始めてみるといろんなことを思い出してしまって、なんともまとまらない感じになってしまった。こうして書いてみると、もちろん忘れていることも多いけれど、自分でも驚くくらいに詳細に覚えていることもあったりして、もう40年くらいも前のことなのに、いろいろと思い出してしまってなんとも面白い。



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