21/02/21

ねんきん定期便を見て思ったこと

ねんきん定期便が今年も送られてきた。これは、いわゆる「消えた年金問題」がきっかけとなって始まった制度だけれど、自分が納めている年金保険料がちゃんと記録されているのかどうかを確認できるので、いい制度だと思う。実際に、初めてねんきん定期便が送られてきたときには、数年分の記録がごっそりと抜け落ちていたので、「おいおい、おれの年金も消えているじゃないか!」とあわてた覚えがある。



定期便を見るときには、最初にこれまでの保険料の累計納付額を見るのだけれど、そのたびに「そうか、これまでにこれだけの額を納めてきたんだな」と、ちょっとした感慨にふけってしまう。自分は常に薄給だったし、フリーのシステムエンジニアとして働いていたときには厚生年金は納めていなかったので、保険料の累計納付額は平均よりもかなり少ないと思うけれど、それでもやっぱり積もり重なるとけっこうな金額になる。

ただ、その見返りはかなり大きい。仮に年金の受給を開始してから20年間生きると考えた場合、それまでの累計納付額の倍以上はもらえる計算になる。もちろん、これは単純に計算した場合の金額で、これから先の経済状況などの要因によって変わってくるだろう。ただ、平均寿命まで生きるという前提で考えれば、これから景気が悪化したとしても、受給額が納付額を下回るという「元本割れ」の状態になることはさすがにないだろう。

年金の受給開始年齢は65歳だけれど、これを遅らせるほど年金額は高くなっていく。逆に、年金の受け取りを早めることもできるけれど、その場合は受給額の割合が低くなり、その割合はずっと適用されるから、よほどのことがない限りは、65歳よりも前に年金を受け取ることはないと思う。しかし、年金の受け取りを遅らせるかどうかについては、けっこう悩ましいところだ。

ねんきん定期便を見ると、70歳まで受給を遅らせた場合、65歳から受給した場合と比べて、年金額が42%も増えると書かれている。5年待てば4割増しというのは、かなり魅力的な数字だ。自分はなんだかんだ言ってもけっこう健康体なので、あまり望んではいないけれど、無駄に長生きしそうな悪寒がしている。だったら、受給開始を遅らせたほうが絶対にお得だ。

しかし、その場合に問題になるのが、70歳までどうやって食いつないでいくかということだ。翻訳という仕事は肉体的にはまったくキツくないし、仕事自体もそれなりに楽しいので、頭がしっかりと回っているうちは仕事を続けていきたいと思っているけれど、機械翻訳の急激な進化を目の当たりにすると、この仕事にしがみついていられるのも長くはないかもしれないと思ってしまう。

なので、悲観的なシナリオとして「60歳で仕事を辞める」というケースを考えてみることがよくある。この場合、70歳から年金を受給しようとすると、10年間の待機期間が発生することになる。その場合の年金額は、現在の生活レベルを維持するには少し足りないけれど、生活の大部分は年金だけでまかなえるくらいだと思う。これは、あくまでも現在の物価が変わらなければという前提での計算だ。

とうことは、60歳までの貯金額が、70歳になるまでの10年間の生活費をまかなうだけあり、それにプラスして、年金生活を始めてから毎月発生するであろうマイナス分を補てんできるだけの貯金があれば、なんとかなるということだ。これくらいだったら、なんとかなりそうな気がする。というか、たぶんなんとかなるんじゃないかな。なんとかなるといいな。

たとえば、現在の毎月の生活費が20万円、70歳からの年金額が月18万円で、85歳まで生きると仮定してみる。この場合、年金受給開始までの生活費は10年間で2,400万円、70歳から85歳までの生活費の不足分が15年間で360万円なので、60歳までに約3,000万円を貯金すればいいという計算になる。これくらいの金額なら、これから先何もなければ、なんとかいけそうな気がする。

実際には、現在の生活費も70歳からの年金額も、どちらもこんなに高くはない(すみません、ちょっとだけ見栄を張ってみました)。しかし、必要な金額の比率としては同じことなので、いきなり職を失うなんていうことがない限りは、70歳からの受給開始でも問題ないという結論になるけれど、実際に65歳になったときには、おそらく年金を受け取ると思う。もっと若ければ話は別だけれど、65歳になったときに、「70歳からの人生をエンジョイするためにあと5年待とうかな」みたいな気分にはならないと思う。



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