21/01/24

アメトークの「40歳過ぎてバイトやめられない芸人」を見て思ったこと

自分は「アメトーク」というバラエティ番組が好きで、よく見ている。この番組のことを知らないよい子のために簡単に説明すると、毎回1つのテーマを決めて、そのテーマに詳しい芸人を集めてトークを展開していくという番組だ。トークのテーマは本当に多岐にわたり、芸人だけを集めてよくぞここまでトークを展開できるものだなといつも感心しながら見ている。



ということで、今回のテーマは「40歳過ぎてバイトやめられない芸人」だった。このタイトルのとおり、40歳を過ぎてもまったく売れず、バイトを続けながら芸人としてブレイクすることを夢見ている人たちが集まっていた。自分はけっこうなお笑い好きで、お笑い芸人のネタ番組はなんとなくチェックしているけれど、そんな自分でも、これまでにテレビで見たことがあるのは2〜3人くらいしかいなかった。お笑いが好きな自分でさえそんな感じだから、普通の人にとっては「知らない人ばかり」という状態だったのではないだろうか。

出演した芸人たちは、平均して全体の収入の7割から8割くらいをバイトでまかなっている感じだった。中には、「収入の99.99パーセントがバイトです」なんていう芸人さんもいたけれど、それってもうバイトではなくて本業だろう。MC席に座っていたケンコバさんもそのことを突っ込んでいたけれど、そんな状態でよく番組に呼ばれたものだと思う。この99.99パーセントの人はトークもまったく面白くなかったけれど、番組の最後で名言を放つことになる。それについては、また後で書こうと思う。

それはともかく、ちょっと驚いたのが、妻子を持っている人がけっこう多いということだ。「40歳を過ぎてもまだバイトをしているお笑い芸人」という属性で考えてみると、「いつか売れることを夢見ながら、気付いてみたら歳だけとっていていまだにバイトで独身」という姿を想像してしまうけれど、意外にそんなこともなくて、ちゃんと家庭を持って頑張っている人も多い。

3歳と5歳とか、小さな子どもが二人もいる芸人さんもいたりして、「おいおい、バイトなのに子供を二人も作って大丈夫なのかよ」みたいに余計な心配をしたりする。売れない芸人という立場だったら、普通は結婚さえためらってしまうと思うけれど、それが結婚どころか子どもまで作ってしまうわけだから、本当に勇気があると思う。独り身の自分としては、その勇気がちょっとうらやましくさえある。

ただ、実際の生活は間違いなく大変だと思う。収入の面でももちろん大変だろうけれど、40歳を過ぎてもバイトを続けているということは、精神的にもかなり大変だと思う。番組に出演していたのは一応はお笑いのプロだから、辛い話も笑いに変えていたけれど、「心の底では、本当に辛い思いや悲しい思いや悔しい思いをしているんだろうな」と感じてしまって、あまり笑えなかった。

夢を追い続けるという意味では、プロスポーツ選手もお笑い芸人と通じる部分がある。自分は、毎年年末にTBSで放映される「プロ野球 戦力外通告を受けた男たち」という番組が好きでいつも見ているのだけれど、プロスポーツの世界もお笑いの世界も、表舞台に立てる人はほんの一握りで、それ以外の「その他大勢」の人たちは、だれにも知られることなく日々の生活を送っているのだ。

プロ野球の場合は、ドラフトにひっかかると一応はニュースに取り上げられて、テレビやスポーツ新聞などで紹介してもらえる。子どもの頃からプロ野球選手になることを夢見て家族総出で頑張っているような人たちもいて、そういう家庭からプロ野球選手が出たりすると家族一同で喜んだりするわけだれど、それってどうなのかなと思ってしまう。ドラフト1位ならいいけど、育成枠での採用でも狂喜乱舞している姿を見ると、ちょっとどうかなと思うのだ。

育成選手なんて、せいぜい年棒500万円くらいだろう。まあ、同年代の大卒新入社員と比べたらだいぶ高い年収ではあるけれど、いつクビを切られるかわからないことを考えたら、とてもじゃないけれど高い年収だとは言えない。そもそも、周東選手みたいに育成枠から這い上がって成功する選手なんてほとんどいないわけで、育成枠でドラフトされた時点で、プロで成功できないことはほぼ決まっているようなものだ。

それなのに、育成枠でドラフトに引っかかったことを家族総出で狂喜乱舞するというのは、ちょっとどうなんだろうと思ってしまうわけだ。育成枠から一軍に昇格して活躍する割合なんて、ほんの数パーセントではないだろうか。たとえば3パーセントと仮定した場合(これでも高すぎると思うけれど)、育成枠で指名された瞬間に、プロ野球選手としての失敗が97パーセントの確率で約束されたことになる。これで、ドラフトに引っかかって狂喜乱舞するというのはどうなんだろうか。

とはいうものの、こういう夢にかける人たちの気持ちはわからないこともない。「アメトーク」に出演した売れない芸人が、「どうしてこんな状態でも芸人を辞めないのか?」という質問に対して、「ここで芸人を辞めたらただのフリーターだけど、芸人を続けていればいつかブレイクするかもしれない、そのための切符が芸人という自分であり続けること」みたいなことを言っていて、このセリフに「なるほど」と共感してしまった。

スタジオにいた芸人たちも同じように共感したようで、一瞬にして「わかるわあ」みたいな空気になっていた。いままでくすぶっていた芸人たちの気持ちを見事に代弁するセリフだったと思う。これは、「収入の99.99パーセントがバイトです」と言った芸人から出た言葉だけれど、めっちゃ名言だと思う。いままでなんとなくわかってはいたけれど、この言葉を聞いて心に刺さった芸人は多いのではないだろうか。実は、底辺サラリーマンの自分にも、ちょっとだけ刺さった。自分も、この歳になっていまだに「なんとかなんないかな」と夢を見たりしているのだ。



今週の覚書一覧へ

TOP


inserted by FC2 system