21/01/17

QBハウスについて考えてみる

自分は美容院が嫌いなので、なるべく行かないようにしている。何が嫌いかといえば、カットの最中にしたくもない世間話をしなければならないことだ。ただ、何度か通って「自分は世間話なんてしたくないんです」というオーラを強烈に出せば、何も話しかけられることなくカットしてもらえるようになるけれど、それもけっこう面倒だし、せっかく気を使って話しかけてくれている店員さんを冷たくあしらうのも気が引ける。



ということで、美容院には半年に一度くらいのペースで通っているわけだけれど、狛江市に引越してきてからは「QBハウス」を利用している。説明する必要もないだろうけれど、QBハウスは激安カット店の先駆的な存在だ。創業当時はカットが1,000円だったけれど、いまは1,200円になっている。「カットの仕上がりが極端におかしくなければ別にどの店でもいいや」と考えている自分にとっては、非常にありがたいお店だ。

しかし、QBハウスに行くたびに思うのが、「こんなに安い値段でどうやって利益を出しているのだろう」ということだ。1回のカットにかかる時間はおそらく15分程度だから、フル回転すれば、スタッフ1人の1時間あたりの売上は4,800円ということになるけれど、客の入れ替えにかかる時間も必要だし、そもそも常にフル回転するなんて無理だろうから、どんなに高く見積もっても、せいぜい4,000円くらいではないだろうか。

実際には消費税の分も差し引く必要があるから、4,000円を確保するのはかなり大変だと思う。美容院は、飲食店のように毎日食材を仕入れたりする必要はないから、一番大きな費用は人件費ということになるのだろう。ということは、時間あたりの売上高が4,000円という状態で店の利益をあげるためには、結局のところ人件費を削るしかないということになる。

QBハウスの求人情報をちょっと調べてみたところ、スタッフの平均的な給与は25万円くらいのようだ。ボーナスはないようなので、年収にすると約300万円ということになる。休日は月に8日というのが平均的らしいので、1日の労働時間を8時間、ひと月の勤務日数を22日として計算すると、25万円÷(8時間×22日)ということで、時給は約1,420円ということになる。

この数字を算出したときの正直な感想として、「マジかよ、こんなに安いの?」と思った。時給1,400円なんて、飲食店の深夜スタッフと同じくらいの金額だ。バイトでも1,400円くらいは稼げるわけだから、正社員の金額としてはかなり低いと思う。しかも、体力さえあればだれでもできる飲食店の仕事とは違い、国家資格を必要とする仕事なわけだから、不当に安い金額だと思う。

ということで、「こんなに安い値段でどうやって利益を出しているのだろう」という疑問に対する答えは、「人件費を不当に安く抑えているから」という、まったく面白くもなんとない結論になってしまった。よく考えてみれば、というかよく考えてみなくてもこれは当然のことで、限られた売上から利益を出そうとすれば、経費を削るしか方法はない。美容院の場合は、それが人件費だというだけのことだ。

QBハウスには、若いスタッフさんも多いけれど、自分と同年代かなと思うようなおじさんスタッフもけっこういる。独身だったら、年収300万円でもなんとかなるだろうけれど、家庭を持っていたら、この年収では相当厳しいだろう。昨日髪を切ってもらったスタッフさんも、おそらく50歳前後の男子だったので、これを書きながら「あの人もけっこうな苦労をしているんだろうな」なんてことを考えてしまう。

美容師はずっと立ちっぱなしで体力的にもキツいだろうし、接客業だから面倒くさい客にも低姿勢で対応しなければいけないから精神的にも疲れるだろうし、本当に大変な仕事だと思う。それなのに年収300万円って、ちょっと安すぎないだろうか。などと言ってはみるものの、こういう格安店を利用する自分のような人間がいるということが、こういうお店で働く人たちの給料が安くなる原因につながっているということは理解している。ちょっとした負のスパイラルだ。

ただ、お得に髪を切ることができる店があれば、自分のような貧乏人はどうしても利用してしまうのだ。たとえそれが負のスパイラルを生み出してしまう行為であるということがわかっていてもだ。若い頃は、ちゃんとした美容室に月イチで通っていたのに、なんともケチ臭い感じになってしまったものだ。しかし、こういう格安店が繁盛するというのは、それだけ日本という国が貧しくなっているということの証明だと思う。日本はいつからこんなに貧しい国になってしまったのだろうか。



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