19/09/01

金銭感覚の養い方について

昨日ラジオを聴いていたら、電話相談の番組が放送されていたので、なんとなく聴いていたのだが、けっこう面白かった。回答者はドリアン助川さんで、この人は本業は作家なのだけれど、人生相談の達人として有名な人だ。20年くらい前に、深夜のラジオ番組で若者からの悩み相談に答えていて、ずいぶんと熱い番組だったらしい。現在は、別の番組で人生相談をしていて、昨日聴いたのは、その番組の特別版という位置付けだった。



相談者は中学3年生の娘を持つ母親で、娘が「毎月のお小遣いが2,000円で少ないので、どうしたら増やしてもらえるのか」という内容で番組に相談を依頼したことを知り、「お小遣いが少ないという件で相談を依頼した女子の母親です。娘ではなく、ぜひ私と話してください」という相談を依頼したという経緯だ。相談者本人ではなく、その母親の相談を受けるという意外な展開に興味を惹かれた。

話を聞いていると、どうやら母親は、娘がスマホばかりいじっていることに不満を持っているらしい。一応、スマホを使う時間に制限を設けてはいるのだが、ベッドにスマホを持ち込んでいたりしてルールが守られていないという状況に不満を持っていて、こういう状況では、お小遣いを上げたとしても、何の計画性もなく好きなだけ使うことになりそうで不安だということだった。

これに対するドリアン氏の回答は、「家事の手伝いをさせる対価として、お小遣いを上げてやればどうか」というものだった。これを聞いて、なるほど、これはいい方法だなと思った。無条件に金額を上げるのではなく、労働の対価として上げるということであれば、どちらにとってもメリットはあるから、丸く収まりそうだ。さすがはドリアン、ナイスな回答だぜ、お母さんもこれで納得だろう。

などと思っていたら、母親はまったく納得していなくて、「子供をお金で釣る」ということに強い抵抗を感じているらしい。そんな母親に対してドリアン氏は、「世の中のすべてのことが、労働に対して対価を支払うことで成り立っている。それを家庭で教えることは何も悪いことではない」と答えていた。自分もそう思うし、ほとんどの人がそう思うのではないだろうか。この母親の考え方がよくわからない。

自分が中学生のときは、小遣いはもらっていなかった。日曜日に部活に行くときに、昼食代として300円をもらうくらいで、定額の小遣いというものは一切なかった。暑い日などは、帰りにアイスを買って食べることもあったけれど、それはお年玉でもらったお金を使っていたと思う。ほかの子もそんな感じだったと思うけれど、中には毎月500円くらいの小遣いをもらっている子もいたりして、それはちょっとうらやましかった。

お年玉以外の収入源としては、農作業の手伝いがあった。自分の実家は、米としいたけを作っている専業農家で、子供の頃は農作業の手伝いばかりをしていたような記憶がある。春と秋の農繁期にはいつも手伝いをさせられていて、友達と遊ぶことができなかったのが子供心にも辛かった。というか、夏休みも毎日のように手伝っていたような気がする。

毎年春になると、しいたけの原木にドリルで穴を開け、その穴に金槌で菌を打ち込むという作業をしていた。「種駒」と呼ばれるこの菌は、一袋に千個入っていて、一袋を原木に打ち込むと千円がもらえるというルールになっていた。父親が原木に穴を開け、母親と兄貴と自分の三人で種駒を打ち込んでいくというシステムだった。

当時小学生だった自分は、丸一日金槌を振っても、千個入りの袋を二つ空にするくらいが限界だった。兄貴はその倍、母親はその3倍から4倍くらいはさばいていたので、自分はほとんど戦力にはなっていなかったと思う。それでも、一日働いて2,000円を得るというのは、なんだか自分の働きが評価されたような気がして、ものすごくうれしかったことを覚えている。

農作業の手伝いをしてお金をもらっていたのはこの種駒打ちのときだけで、それ以外の田植えや稲刈りなどの手伝いはすべて無償だった。ただ、いまから思えば、このシステムは絶妙だったなという気がする。千個の種駒を打てば千円がもらえるというのは、非常に明朗会計でわかりやすく、労働に対するモチベーションが上がる。子供の頃から「労働の対価はお金」ということを教えるのは、決して悪いことではないと思う。

自分が育った環境は、「逆に自慢できるほど貧乏」というほどではないけれど、普通に貧乏だったとは思う。だから、子供の頃からお金の大切さは認識していたし、無駄遣いをすることもなかった。そのおかげで、いまはかなりケチ臭い人間になってしまったけれど、ギャンブルなどに散財するよりはずっとマシだと思っている。金銭感覚を養うためには、ちょっと貧乏な家庭に生まれ育つのが一番だと思う。



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