19/07/20

マスメディアの不可解な報道について考えてみる

また今回も韓国関係のネタになってしまって申し訳ないけれど、なにしろ今月の1日に韓国に対する輸出規制の見直しが発表されてからというもの、次々に注目すべきニュースが出てくるから、韓国ネタをウォッチしている自分としては、いっときたりとも目が離せない状況になっている。そんな感じで、今朝もパソコンを立ち上げて日韓関係についてのニュースをチェックしていたところ、気になるニュースを見つけた。



それが「日韓対立で仲裁の用意、トランプ氏が表明」というニュースで、日韓の対立についてトランプさんが仲裁を買って出る用意があるという内容だ。これを読んだときにまず思ったのが、「アメリカが仲裁するとなると、なにかと面倒だな」ということだ。2015年の年末に電撃的に慰安婦問題で日韓が合意したけれど、あのときもオバマさんの強い意向が働いて日本が押し切られたという背景があるだけに、今回も同じような展開になるのではないかと思ったのだ。

しかし、今回の輸出規制の見直しについては、事前にアメリカから同意を取り付けていたはずだという見方が一般的なので、このタイミングでトランプさんが仲裁に乗り出すというのはなんだか解せない。そもそもいまのアメリカは、中国とイランに関する問題が最優先事項だろうから、日韓関係という面倒な問題の解決に積極的に関与する理由が見つからない。

そんな感じで、どうにも納得できないので、このニュースの元ネタであるブルームバーグの記事を探して読んでみたところ、日本語の記事とはまったくニュアンスが違っていて驚いた。そもそもタイトルからして「Trump Bemoans Request to ‘Get Involved’ in Seoul-Tokyo Dispute」となっている。このタイトルを読めば、「トランプさんは仲裁なんてしたくないんだな」ということが一発でわかる。なにしろ「Bemoans」だもの。

この覚書を読んでくれる人はきっと英語が得意な人が多いと思うので、いちいち訳す必要はないだろうけれど、一応便宜的に訳しておくと、「日韓の対立に巻き込まれるトランプ氏の嘆き」くらいの感じだろうか。それが、AFP通信から配信されると、「日韓対立で仲裁の用意、トランプ氏が表明」というタイトルになってしまう。この違いはいったいどこから来るのだろう。

英語の記事を読んでみると、ムンムンから仲裁の依頼を受けたトランプさんは、「I said, ‘How many things do I have to get involved in?」と答えたらしい。言うまでもなく、これは明らかにムンムンの仲裁依頼を迷惑に感じている言い方で、「いまはいろんなことで手一杯だから、そこまで面倒をみる余裕はない」ということだ。こういう言い方をされれば、「あ、そうですよね、すみません」と言ってしまいそうなくらいに突き放した表現だ。

トランプさんはさらに、「
It’s like a full-time job, getting involved between Japan and South Korea」とも言っているから、まったく仲裁について乗り気ではないことがわかる。でも、「like a full-time job」っていうのはどうなんだろう。これだと、いまはパートタイムワークしかしていないことになる。「like overtime work」と言った方がよかったように思うけれど。もうちょっと仕事しようよ、トランプさん(笑)。

元記事の最後でトランプさんは「
If they need me, I’m there 」と言っていて、これが日本語に訳された記事の「彼らが私を必要とするなら、協力する用意がある」の部分にあたるのだろう。しかしトランプさんはその後に「Hopefully, they can work it out, but they do have tension, there’s no question about it, trade tension」と言っている。要は、「日本と韓国だけでやってくれ、まあお互い譲れないところだろうけどね」ということだ。

実際に日本語の記事と英語の記事を読み比べてみればすぐにわかると思うけれど、まったくニュアンスが違っている。元の記事ではトランプさんのやる気のなさが明らかにわかるけれど、日本語の記事ではそんな感じではなくて、むしろ積極的に仲裁しますよ、くらいの勢いを感じる記事になっている。どのような意図があってこのような記事になったのかはわからないけれど、理由はどうあれミスリードしようとしているのは間違いない。

今回紹介した記事だけではなく、事実から遠く離れてしまっているような記事はけっこう多いように感じる。まあ、マスコミの偏向報道はいまに始まったことでもないけれど、どうして事実を事実として報道しないのだろうということはいつも感じている。ちゃんと事実を伝えた上で、「でも、ウチとしてはこういう見解です」と言ってくれればいいのに、事実と見解を巧みに混ぜてミスリードしていこうとするからタチが悪い。

それはともかく、個人的には、「
But I like both leaders, I like President Moon, and you know how I feel about Prime Minister Abe, a very special guy also」というトランプさんの発言が興味深い。「I like President Moon」というのはおそらく社交辞令で、「Prime Minister Abe, a very special guy」というのが本音だろう。これを読んだときに、間違ってもアメリカが韓国の味方をすることはないだろうと思った。



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