19/02/17

炊き込みご飯の愉悦

それにしても、池江さんの白血病のニュースはショックだった。自分は、世の中の大多数のおじさんと同様に、可愛いのに強いという池江さんの大ファンだ。18歳というまさに伸び盛りのこのときに白血病にかかるなんて、何と言ったらいいのかわからない。白血病と聞くと、どうしても夏目雅子や本田美奈子といった名前が浮かんでしまうけれど、あの時代とは比べ物にならないくらいに進んでいるらしい現代の医学に期待している。

そんなショックを受けつつも、自分の日常は淡々と進んでいくわけなので、この覚書も、いつものように淡々と書いていきたい。

今回は、炊き込みご飯について書いてみようと思う。自分は、けっこう炊き込みご飯が好きだったりする。初めて炊き込みご飯を食べたのは小学生のときで、鶏肉が入った五目御飯のような感じだったと思う。それまで、色が付いたご飯というのは、赤飯くらいしか食べたことがなかったから、初めて炊き込みご飯を食べたときには、なんて美味しいんだろうと感動したものだ。



炊き込みご飯を食べて無邪気に喜ぶバカっぽい息子の様子を見てうれしくなったのか、母親はその後も何度か炊き込みご飯を作ってくれたけれど、最初の感動があまりにも大きかったせいなのか、あるいは食卓に出てくるたびになんだか味が違うという不安定な品質のせいなのか、2回目以降はそれほど美味しいと感じることはなかった。そうした自分のリアクションのせいなのかどうかはわからないが、気付いたら、炊き込みご飯が食卓に乗ることはなくなっていた。

そうした経緯のある炊き込みご飯だけれど、もちろんいまでも大好きだ。結婚していた頃も、しめじを中心とした炊き込みご飯が食卓に出てくることがときどきあって、そんなときは「おお、今日は炊き込みご飯だ」みたいな感じで、子供みたいに喜んでいた。とにかく、炊飯器の蓋を開けたときに飛び込んでくるあの香ばしい匂いが何とも言えない。あの匂いだけで、どんぶり飯3杯はいける。

ということで、いまでも無性に炊き込みご飯を食べたくなるときがあるのだけれど、自分で作るとなると面倒なので、ちょっと尻込みをしてしまう感じがある。いや、作ること自体は簡単だということはわかっているけれど、何というか、炊き込みご飯には「幸せな家族が仲良く食べるもの」というイメージがあって、自分みたいな独り者が食べるものではないという思い込みがあったりするのだ。

実際に、スーパーなどで炊き込みご飯の素を買おうと思って見てみると、そのほとんどが、「2〜3人前(2合分)」または「3〜4人前(3合分)」というボリューム設定になっている。つまりは、炊き込みご飯というのは、一人で食べるものではないということだ。メーカーとしては、幸せな家族があれこれと楽しそうに話しながら炊き込みご飯を食べるという、そんなシチュエーションを想定しているわけだ。

ということで、自分のような独り者は、炊き込みご飯を食べてはいけないようだ。少なくとも、メーカーにとって独身者という存在は、炊き込みご飯の素を売り込むターゲットとして認識されていないということだけは間違いない。だったら、一人分の炊き込みご飯を自分で作ってみようと考えてみたところ、永谷園の松茸風味のお吸い物がいいらしいという噂を耳にした。

なんでも、お吸い物の素を入れてご飯を炊くだけで、美味しい炊き込みご飯ができるらしい。なるほど、それなら簡単だ。いくら料理が苦手な自分でも、それくらいならできるだろう。早速、お吸い物の素を買ってきて、研いだ米に入れてみた。それだけは淋しいので、ネットで見たレシピを参考にして、エリンギと油揚げを刻んで入れてみた。仕上げに色付けとしてちょっとだけ醤油を入れて、炊飯器のスイッチを押す。

炊きあがるまでそれほど期待せずに待っていたのだけれど、途中からものすごくいい匂いがしてきて、思い切り食欲を刺激され、思わず腹が鳴る。炊きあがってふたを開けてみると、ものすごくいい匂いがするではないか。期待に胸をふくらませながらご飯をよそって食べてみると、実にうまい。なんだ、この美味さは。こんなに簡単にできて、こんなに美味くていいのか。

いや、正直なところ、信じられないくらいに美味いというわけではなくて、普通に美味いという感じだけれど、作る手間とコストを考えれば、十分な出来上がりだと思う。なにしろ、炊き込みご飯と熱々の味噌汁さえあればそれで十分で、余計なおかずなどいらないのだ。下手におかずを付けてしまうと、せっかくの炊き込みご飯の美味しさがスポイルされてしまってよろしくない。どうしてもおかずが欲しいという場合は、お新香などのちょっとした副菜を付けるのがいいと思う。

そういう意味では、弁当を食べる場合は絶対に白飯がいい。おかずが同じで、白飯と炊き込みご飯だけが違う弁当が並んでいた場合、迷うことなく白飯が詰められた弁当を選ぶだろう。はっきり言って、炊き込みご飯の場合はおかずがムダだと思う。なんというか、おかずが充実している炊き込みご飯弁当というのは、カレーチャーハンの上にカレーソースがかかっているような感じ、とでも言えば理解してもらえるだろうか。

ということで、お吸い物の素を使った炊き込みご飯は、だれでも簡単にできて安上がりなのにけっこう美味いという、非常に優れたメニューだ。自分には、気に入ったものを繰り返し食べるという傾向があるのだけれど、炊き込みご飯についても同じで、最近はこればかり食べている。いまのところ、ヘビーローテーションでも飽きることはないが、飽きてきたら少し具を工夫してみようかと思っている。



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