19/02/11

映画「ボヘミアン・ラプソディ」の感想を語る

ということで、いまさらながら「ボヘミアン・ラプソディ」を観た。最後に映画館で映画を観たのはマイケル・ジャクソンの「This is it」だから、実に約10年ぶりの映画鑑賞ということになる。自分は、映画にしろ本にしろ、大ヒットしているからとか、ものすごいベストセラーになっているから、というだけの理由で観たり買ったりすることはない。自分が本当に興味のあるものしかお金は出さない。



しかし、今回ばかりは、「なんだかものすごく評価が高くて素晴らしい映画みたいだから、ちょっと観てみようか」というミーハーな理由だけで観てしまった。なにしろ、ボヘミアン・ラプソディは素晴らしい、面白かった、感動した、泣けたという絶賛の感想ばかりが目や耳に入ってくるので、そんなにいい映画なら観てみようと思ったわけだ。

しかし、自分は特にクイーンのファンというわけではない。もちろん、代表的な曲についてはいくつか知っているけれど、クイーンのアルバムを買ったなんてことはないし、積極的にクイーンの曲を聴こうと思ったこともない。クイーンについては、ボーカルのフレディ・マーキュリーがものすごいゲイで、ものすごくたくましい胸毛が生えていて、最後はエイズで亡くなった、ということくらいしか知らない。

ただ、映画自体はクイーンのファンでなくても楽しめるということらしいので、ゲイ、胸毛、エイズという3つの偏った知識だけを持って映画館に向かった。実際に映画を観た感想としては、いったい何が面白いのだろう、というのが正直なところだ。なにしろ、エンドロールが流れ始めたときに、「え、これで終わりなの?」と思ってしまったくらいだ。

あまりにも評価が高いので、自分の中でハードルが上がりすぎてしまったという点は否定できないけれど、それを差し引いて考えたとしても、いったいどこで感動すればいいのかがさっぱりわからないのだ。フレディ・マーキュリーの内面を深く描き出すような内容になっているのだろうと思っていたのだけれど、特にそんなこともなく、感情移入ができないままに終わってしまったという感じだ。

ただ、フレディ・マーキュリーを演じた俳優の演技は素晴らしかったと思う。最初に登場したときにはさえないロン毛姿で、「こんなの、全然フレディ・マーキュリーじゃないじゃん」と思ったのだが、途中でガラリとルックスを変えて登場したときには、まさに自分が抱いているイメージのフレディ・マーキュリーそのものといった感じで、そのあまりの見事な変身ぶりに「いや、これはすごいな」と驚いた。

この映画を観て初めて知ったのだが、フレディ・マーキュリーはゴリゴリのゲイというわけではなく、バイセクシャルだったらしい。普通に女性も愛せるのであれば、わざわざスキャンダラスなゲイという性癖に走る必要はなくて、普通に女性と結婚して普通に幸せな家庭を築けばよかったのに、なんてことを無責任に思ってしまった。まあ結局は、女子よりも男子の方が好きだったということだろう。

あと、映画を観ていて気になったのが、フレディ・マーキュリーをはじめとして、登場するゲイがみんな口ひげをたくわえているということだ。「短髪 + 口ひげ = ゲイ」という、いかにもステレオタイプなイメージが自分の中で出来上がってしまい、これから、短髪で口ひげを生やしている人は(オプションとして胸毛も)、すべてゲイに見えそうな気がしてちょっと怖い。

ストーリーにしても、フレディ・マーキュリーをはじめとして、各登場人物の内面を深く描き出すようなものになっているのかと思っていたら、全然そんなことはなく、フレディは調子に乗って周囲に迷惑をかけるようなイヤな感じの人間だし、ところどろでしおらしい一面も見せるけれど、感情移入して応援したくなるほどでもない。フレディ以外のキャラクターにしても、「ギターの彼氏、昭和のフォークシンガーみたいな髪型してるな」とか、「ドラムの彼氏、イケメンだな」とか、そういう薄っぺらい感想しか残らない。

ただし、ラストのライブシーンだけはすごいと思った。あまりの迫力に、主演の俳優が地声で歌っているのかと思って調べてみたところ、フレディ・マーキュリーの声をベースとして、フレディ・マーキュリーの声にそっくりな人の歌声をかぶせた上で、デジタル編集しているらしい。しかし、映像ではまったくそんなことはわからず、その迫力にただ圧倒されるばかりだ。

ということで、この映画はクイーンのファンであれば楽しむことができると思うけれど、自分のように、クイーンには特に興味がないという人間にとっては、それほど面白い映画ではないと思う。もちろん、映画には人それぞれの楽しみ方があってしかるべきだとは思うけれど、自分のように、あまりにもハードルを上げすぎた状態で観てしまうと、観終わった後でガカーリしてしまうことになるかもしれない。



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