18/11/18

北方領土問題について考えてみる

ここにきて、北方領土問題が大きく動き出しそうな感じになってきた。1956年の日ソ共同宣言をベースとして、今後3年以内に平和条約の締結を目指すことで日本とロシアが合意したらしい。日ソ共同宣言には、平和条約の締結後に歯舞と色丹の2島を返還すると明記されているため、安倍さんはこれまでの四島一括返還という日本の立場を捨てる気なのかという批判の声があがっている。

産経新聞は、安倍政権にかなり肯定的な論調の記事を書くことで有名だけれど、今回の件については安倍さんの決断を批判している。北方四島は日本固有の領土だから、日本が譲歩したという姿勢をロシアに見せるのは間違っているし、ここで譲歩してしまったら、領土問題を抱えている中国や韓国からも付け込まれてしまう、というのが産経新聞の主張だ。

某巨大掲示板を見ても、安倍さんを批判する意見が支配的だ。その気持ちはよくわかる。日ソ不可侵条約を締結していたにもかかわらず、広島に原爆が投下された直後に日本に対して宣戦を布告し、北方領土を占拠したのだ。こんな卑劣な方法で奪われた日本固有の領土を一括して返還しろというのは正論だし、自分だってそう思う。しかし、今回は安倍さんの決断を支持したい。

そもそも、戦争で奪われた領土を取り返すには、もう一度戦争をして勝つしかない。ものすごく理不尽だけれど、戦争とはそういうものだ。だから、いくら正論を主張したところで、戦争する手段を持っていない日本としては何もできない。いまさらロシアが、「はい、おっしゃるとおりですね」なんて言って四島を一括して返してくれるはずがない。そんなこと、小学生にだってわかる。

自分は、択捉島は無理としても、国後島は返してほしいと前から思っている。その理由は単純に、「地図で見たときの収まりがいい」からだ。地図帳があれば北海道のページを開いてみてほしい。択捉島はページから見切れているけれど、歯舞、色丹、国後の3島はきれいにページ内に収まっている。なので、国後島と択捉島の間に国境線を引くと、非常に収まりがいいのだ。

そもそも、歯舞群島がロシア領だというのが異常なのだ。本当に、納沙布岬の目と鼻の先にあるのに、実質的にロシア領になっているのはどう見てもおかしい。これも地図を見るとよくわかるが、歯舞、色丹、国後の3島は浅い水深でつながれた一つのグループになっていて、国後と択捉の間の水深は深くなっている。地形的に見ても、この3島は日本の領土でなければならない。

なので、自分としても四島すべてが返還されるのが理想ではあるけれど、そんなことばかり言っても何も前には進まない。このまま正論ばかり主張して何も得るものがないのがいいのか、とりあえずは妥協して少しでも取り返すのがいいのかと言えば、後者の方がいいに決まっている。鈴木宗男さんがよく言っているが、「戦争で奪われた領土を1ミリでも返してもらったら、それはすごいことなんだ」というのは、本当にそのとおりだと思う。

プーチンに限らず、ロシア政権は一貫して「1956年の日ソ共同宣言は有効である」という立場をとっているけれど(というか、日本が粘り強く交渉して、日ソ共同宣言の有効性を繰り返しロシアに確認させているという見方もできるけれど)、これは評価してもいいと思う。というか、国としてはそれが当たり前のことで、感情に任せて国同士の条約を一方的に破棄する韓国が異常すぎるというだけのことだ。

その韓国は、慰安婦の財団を解散することを正式に決定したらしい。以前からそうした動きはあったけれど、まさかこのタイミングで本当に解散の決断をするとは思っていなかった。いわゆる徴用工裁判の判決で日本を激怒させておきながら、それにかぶせるようにしてまた日本の神経を逆なでするようなことを平気でしてくる。どうやら、韓国は日本と本気でケンカをしたいらしい。

だったら、もう日本もだまっていることはない。そろそろ、本気で韓国に痛い目を見させた方がいい。自分はこれまで、韓国に対して経済制裁を発動するのはちょっとどうかな、という感じだったけれど、ここまで露骨にケンカを売られてだまっているわけにはいかない。経済制裁を発動すれば、日本もそれなりにダメージを受けるだろうが、それ以上のダメージを韓国に与えることができるのであれば、検討する価値はある。

徴用工裁判の判決が出てからというもの、本当に頭にきてしかたがない。この調子で書いていくと止まらなくなりそうなので、北方領土に話を戻すと、ロシアが日ソ共同宣言の有効性を認めているうちに返還交渉を進めるのが得策だと思う。卑劣な方法で北方領土を占拠した卑劣な国だから、いつまた日本を裏切らないとも限らない。まずは、お互いに交渉のテーブルにつく必要がある。

歯舞と色丹の2島を返してもらうことだけでも簡単ではないと思うけれど、とりあえずはその2島の返還で手を打っておいて、残りの2島については交渉の余地を残しておくという作戦がいいと思う。ロシアの経済的な基盤は脆弱だし、その広大な国土に反して人口が少ないから、国家を維持していくのはこの先ますます大変になるはずだ。

現在のロシアは、一時的に出生率が改善して人口が増えているらしいが、長期的に見れば人口が減少していくのは避けられないだろう。そうなると、極東の端に位置する国後や択捉で過疎化が進行していくのは間違いない。そんな状態でロシアが経済的な危機にでも陥った場合は、極東のサハリン州なんて切り捨ててしまえという展開にならないとも限らない。

もちろん、日本と国境を接する北方領土は、日本の同盟国であるアメリカとの国境という見方もできるから、ロシアにとっては戦略的に重要な領土であることは間違いないけれど、この先の展開がどうなるかなんてだれにもわからない。日本にとって有利な展開になったときにチャンスを逃さないためにも、歯舞と色丹の2島だけで手を打つのではなく、残りの2島についても交渉の余地を残しておく必要があると思う。



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