18/09/23

本当によく頑張った、稀勢の里

今場所の稀勢の里は本当によく頑張ったと思う。これを書いている時点では、まだ最終的な成績はわからないけれど、8場所連続の休場から戻って2桁勝利ならば、十分すぎるほど十分な成績だと思う。何よりもすばらしいのは、一度も連敗がなかったということだ。連敗をしなかったという事実だけでも、今場所にかける稀勢の里の覚悟がいかに強いものだったのかということがわかる。

正直なところ、場所が始まる前は、序盤から負けが込んで、そのまま引退してしまうかもしれないと思っていた。しかし、場所前のキセノンの稽古を見た北の富士さんが「こりゃあダメだね」みたいな感想をもらしたという記事を見たときに、もしかしたら大丈夫かもしれないと思った。北の富士さんは偉そうなことを言うわりに、事前の予想がほとんど当たらないのだ。だから、自分の中では根拠のない期待がふくらんでいた。

とにかく、最も大事なのは初日の相撲だと思っていた。どんな内容であれ、初日に白星を挙げることができれば、それ以降の流れがまったく違ってくる。逆に、初日の相撲で負けてしまえば、かなりの確率で千秋楽を待たずに引退ということになるだろうと予想していた。だから、初日の対戦相手が勢だとわかったときには、これは大いにチャンスがあると思った。

なにしろ、稀勢の里にとって勢は大のお得意様で、これまでにたった1回しか負けていないのだ。その1敗も、稀勢の里がけがを負った後の対戦で喫した敗けだから、普通に対戦すれば、まず負けるはずのない相手だ。この初日の割を見て、なんとかキセノンに復活してもらいたいという相撲協会の意図を感じたのは、おそらく自分だけではないだろう。

御嶽海とか北勝富士とか阿武咲とか朝乃山とか、期待の若手はかなり出てきているけれど、一気に横綱に上り詰めるだけの力を持った力士がいるかといえば、ちょっと厳しいかもしれない。遠藤も、人気だけならキセノンにも負けないくらいだけれど、せいぜい三役どまりの力しかないということがはっきりしてしいる。いま以上の相撲を遠藤に期待するのは酷だろう。

だから協会としては、キセノンに代わる看板力士が育ってくるまで、一日でも長くキセノンに綱を張っていてほしいと思っているはずだ。ただ、キセノンほどの人気を集める力士がこの後出てくるのかと考えると、ちょっとどうかなと思ってしまう。自分がいま注目しているのは北勝富士で、この力士はかなり実力があるのは間違いないけれど、あまり華がないのが残念だ。

北勝富士を見ていると、雰囲気が栃乃和歌に似ているなと感じる。栃乃和歌というのはいまの春日野親方で、何年か前に弟子に対する暴行事件でちょっと話題になったことがある人だ。現役時代の最高位は関脇で、一時期は大関候補として期待されたこともある。玄人受けする相撲を取っていて、間違いなく実力はあるのだけれど、残念ながらまったく華がなかった。

北勝富士もそれと同じで、実力があるのは間違いないのに、見た目や雰囲気がどうにも地味というか華がないので、これから三役や大関まで昇進したとしても、キセノンほどの人気を獲得するのは難しいと思う。相撲だってプロスポーツである以上、いかに多くのファンにアピールするかというのは重要な要素だ。デブしかいない相撲の世界だって、見た目は重要なのだ。

そういう意味で、朝乃山にはちょっと期待している。まだ幕内に上がってきたばかりなので、どういう相撲を取るのかということはよくわかっていないけれど、とりあえずはイケメンだというだけで素晴らしい。精悍な感じというよりも、笑顔が可愛いという感じだ。これから番付を上げていけば、相撲女子のハートを一気にわしづかみにする可能性はあると思う。

そんな感じで、期待の若手も育ちつつあるけれど、自分としてはまだまだキセノンに頑張ってもらいたい。自分は、相撲ファンというよりも、キセノンファンなのだ。もちろん、子供の頃から相撲は見てきたけれど、相撲自体が好きだったというよりも、琴桜とか輪島とか北の湖とか千代の富士とか貴乃花とか琴錦とか栃東とか、そのつど当時の人気力士を応援していただけのことだ。相撲マニアと呼ばれる人みたいな知識はないし、そこまでのめりこもうとも思わない(ちなみに、歴代の力士のなかで一番好きなのがキセノン、二番目が琴錦、三番目が栃東です)。

今場所のキセノンにとっての一番の相撲は、何と言っても9日目の栃ノ心との対戦だろう。これまでの対戦成績でも、とりあえず勝ち越してはいるけれど、最近の対戦に限っては、ちょっと分が悪いはずだ。というか、優勝してから大関に昇進するまでの栃ノ心の力強さというのはものすごくて、休場明けのキセノンが栃ノ心に勝つという場面がまったくイメージできなかった。正直に言って、栃ノ心には負けるだろうと思っていた。

しかし
、その予想を裏切って、堂々とした真正面からの相撲で栃ノ心に勝った。この相撲は、キセノンにとっては大きな自信になったのではないかと思う。なにしろ、栃ノ心の怪力は半端ではない。今場所の鶴竜戦だって、横綱が両差しになったにもかかわらず、両まわしをつかんでそのまま強引に釣り出してしまうくらいに腕力が強いのだ。あの相撲には本当にビックリした。

しかし、それよりもすごいのが白鵬だ。これで、41回目の優勝と幕内通算1000勝を決めたわけだけれど、いったいどこまでこの強さを維持するのだろうか。あまりにも強すぎて、いまではヒール役を背負わされている感じがあるけれど、自分としては、まだまだ強い白鵬に対して、同じ横綱としてキセノンが挑み、堂々とした相撲内容で勝ってほしいと思っている。

同じ横綱として土俵に上がり、真っ向勝負で白鵬に勝ってくれれば、もうそれで思い残すことはない。というのはウソで、とにかく少しでも長く頑張って土俵に上がってほしい。そして、できればもう1回くらいは優勝してほしい。そして、優勝後の表彰式で、もう一度男泣きしてほしい。自分は、その姿を見てもらい泣きしたい。



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