18/09/02

マネージャーについて考えてみる

ものすごくいまさらな感じがするけれど、「もしドラ」を読んでみた。「もしドラ」の正式名称は、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という実に長ったらしいタイトルで、2009年の12月に出版された作品らしい。ということは、あの爆発的なブームが起きたのは2010年ということになるのか。



実際に読んでみた感想だが、タイトルからしてかなりトリッキーな内容を想像していたのだけれど、普通に面白い青春小説という感じだった。ちょっとあざとい感じもしなくはないけれど、ラスト近くでは思わず泣いてしまったから、十分に感情移入できる面白いストーリーだったということだろう。なんだかんだ言いながら、日本人は野球が大好きだから、高校野球というのは小説のテーマとして鉄板という感じがある。

この作品の一番のキモは、雑用係というイメージの強い野球部の女子マネージャーが、企業を経営するマネージャーとしての視点を持って野球部を改革していくというところだろう。この発想は面白いけれど、本当にドラッカーの理論を高校野球に適用できるものなんだろうかと思った。おそらく、都合のいい部分だけを切り取って、強引にストーリーを展開しているだけなんだろう。

肝心のドラッカーの理論にしても、それほどありがたがるほどのものでもなく、簡単に書こうとと思えばいくらでも簡単に書けるようなことばかりなのに、あえて難しい表現を使ってわざと難しく書いているような感じで、頭の悪い自分としては、まったく興味を惹かれない。難しいことを難しく書くというのは、実はけっこう簡単なことで、難しいことをわかりやく書ける人こそが、本当に頭のいい人だと思う。

それはともかく、英語の「Manager」には、椅子にふんぞり返って座って、これ見よがしに脚を組んで机に肘をつきながら偉そうに話す外人さんというイメージがあるけれど、日本語の「マネージャー」には、なんだかあいまいなイメージがある。部活動の女子マネージャーも、会社で管理職として働いているマネージャーも、肩書としては同じマネージャーだ。

最近では、よくわからない横文字の役職を使う会社が増えてきた。以前は、係長とか課長代理とか次長とか、序列や階級が一目でわかるような役職名が多かった。自分が新卒で入社した会社は、課長代理からが管理職という扱いになっていて、まずは当面の目標として課長代理を目指すことになる。しかし、いまもこの会社に残っている友人によると、課長代理なんていう昔ながらの役職名は廃止されて、いまではよくわからない横文字になっているらしい。

客先を訪問して、「主任 田中一郎」という名刺と「課長代理 山田太郎」という名刺を受け取った場合、山田課長代理が田中主任の上司なんだなということが一発でわかるが、これが「プロジェクトマネージャー 田中一郎」という名刺と、「プロジェクトアナリスト 山田太郎」なんていう名刺だった場合、田中さんと山田さんの上下関係はどうなっているのだろうと頭を悩ませることになる。

翻訳業界の場合、「プロジェクトマネージャー」という役職名はかなり一般的だ。ただ、他の業界における「プロジェクトマネージャー」とはかなり異なる。たとえば、IT業界におけるプロジェクトマネージャーは、俗にいう「けっこう偉い人」と考えて間違いない。プログラマーやシステムエンジニアという人たちを管理する立場にあるのが、プロジェクトマネージャーだ。だから、普通に偉い。

これが、翻訳業界のプロジェクトマネージャーとなると、ちょっと話が違う。外注の翻訳者や発注元のクライアントとの間で発生するいろいろなことを調整して納品まで進めていくというのが主な仕事になるので、管理者としてのマネージャーというよりは、高校野球の女子マネージャーのように、言葉は悪いけれど雑用係といったイメージの方が強いかもしれない。

それはともかく、マネージャーと呼ばれる偉い人たちは、普段はどんな仕事をしているのだろうか。これまでの30年近い社会人生活のすべてを平社員として生きてきた自分にとって、管理職の仕事内容というのは本当に謎だ。自分のようなバカな人間は、「自分たちみたいな兵隊が現場でまじめに仕事をしていれば会社は回っていくよね、だから管理職なんて必要ないんじゃないの」なんて思ってしまうのだ。

もちろん、現場で仕事をする兵隊たちをまとめるマネージャーがいなければ会社が回っていかないことくらいはわかるけれど、毎日何をしているのかわからないような給料泥棒みたいなマネージャーも、きっとたくさんいるのだろうと思う。まあ、マネージャーにはマネージャーにしかわからないような苦労がたくさんあるのだろうけれど、マネージャーにはまったく縁のない自分としては、どうでもいいやとしか言えない。



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