とりあえず引越し先は決まったわけだけれど、ものすごく憂鬱だ。新築だから室内はピカピカな状態なわけで、本来であればワクワクすべきなんだろうけれど、まったくワクワクしない。まあ、はじめて内見したときには、新築ならではのきれいさにちょっとだけ心がときめいたことは確かだけれど、引越しが近づくにつれて、どんどんと憂鬱さが増してきている。はっきり言って、引越したくない。



今回の引越しにあたって何件もの賃貸物件を見て思ったのは、賃貸と分譲とでは、その間に越えられないくらいの高くて厚い壁が存在するということだ。やっぱり分譲マンションの場合は、いろんな意味で贅沢なつくりになっている。たとえば、外廊下のつくりにしたって、ものすごく余裕をもって設計されている。賃貸の場合はコストカットが最優先されるから、外廊下なんていう一見不要な空間は、ものすごく狭くなっていることが多い。

いま住んでいるマンションを買った2005年は、首都圏の地価がかなり下落傾向になっていて、そのおかげでこの超高級なマンションも、かなり手頃な価格で手に入れることができた。駅から徒歩圏内で、9階建ての8階部分で3LDK、広さも80平米あるから、条件的にも悪くないと思う。具体的な価格については言えないけれど、当時の2人の貯金を合わせてギリギリ即金で買えるくらいの価格だった。

いまのマンションを買った当時は、稲毛駅周辺でもかなり新築マンションの供給があった。このマンションと競合する新築物件も2つほどあったし、その後も数年ほどは、毎年新築マンションが建設されていた。しかし、現在では、「5年ぶりの新築物件」みたいなことがキャッチコピーになるほどで、新築物件の供給はぱったりと止まってしまっている。

大規模物件に適した土地は、もう駅周辺にはほとんど残っていなくて、5年ぶりに供給された新築マンションにしても47戸というかなりコンパクトな物件で、駅から徒歩5分という好立地だけれど、3LDKが3,880万円〜という強気な価格設定になっている。これよりもずっと安い価格で80平米の3LDKを購入した身としては、稲毛駅周辺の3LDKが4,000万円もするのかよ、という感じだ。

それはともかく、2005年に買って2018年に売るということは、13年落ちのマンションということになる。たとえば、これがクルマだったりしたら、13年落ちのクルマなんてほとんど値段はつかないだろう。どんなに大事に乗っていたとしても、買ってから10年以上経過したクルマなんて、いいように買いたたかれてしまうのがオチだと思う。

そんな感じだから、このマンションを売りに出すときにも、それほど高い値段がつくとは思っていなかった。一応は徒歩圏内だし、それなりにきれいに使ってはいるから、そこそこの評価額になればいいなというくらいの感じで、それほど期待はしていなかったけれど、実際にいくつかの会社に見積りを依頼したところ、こちらの予想を大きく超える見積額を提示されて、ちょっと驚いた。

話を聞いてみたところ、最近は都内を中心としてちょっとした「不動産バブル」が起きているらしい。しかも、都内だけでなく、稲毛みたいな田舎でも、駅前の物件はかなり高騰しているらしい。一番驚いたのが、10年ほど前に稲毛駅前に建設されたタワーマンションが、新築時の2割増しの価格で売買されているということだ。稲毛のような田舎でも不動産の売却益を得ることができるというのは、かなりの衝撃だった。

こうしたミニバブルのおかげなのか、稲毛駅周辺の物件の売買動向もけっこう活発な感じらしい。どうせ買うなら新築物件を買いたいと思うのが普通で、まずは新築物件を見る人が多いらしいが、その高さの割に狭かったりして、結局はあきらめてしまうケースがほとんどらしい。新築がダメならなるべく築浅の物件をということで、ウチのような物件を見に来るという流れになるわけだ。

そう考えると、購入する時期というのはすごく重要なんだなと思う。いま稲毛駅周辺で物件を探している人たちは、新築物件を買いたくてもなかなか買えないわけだ。それに比べて自分たちは、ほとんど苦労せずに新築物件を手に入れることができた。しかも、けっこうな値段で売ることができたから、いいときに買っていいときに売れたというべきだろう。言い換えると、いいときに結婚していいときに離婚したということだ。

この物件を売りに出すにあたって数社に見積りを依頼したのだけれど、どの会社も、「いや、これは素晴らしいですね」みたいな感じで、築10年以上経っている物件とは思えないくらいにきれいだとほめてもらって、ちょっとうれしかった。もちろん、きれいにしているのは自分ではなくて、奥さんの努力のたまものですけど。

そうした努力が実ったのか、マンションを売りに出してから2か月くらいで買い手が決まった。ちょっと強気の価格設定で売りに出したので、もし売れなかったらどうしようかと思っていたが、なんとか決まって安心した。自分たちがすごく気に入って大事に住んでいた家なので、なんだか勝手なお願いではあるけれど、これから住むご家族にも、できれば大事に住んでほしいと思う。本当に、買っていただいてありがとうございました。

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