18/06/10

「おいおい、そりゃないだろ」と思った件について

そろそろ引越しの準備を始めなければならないような感じになってきた。とりあえず、7月末までに引越しを済ませることを目標にしてみようと思う。まあ、これまでに引越しは何度も経験しているので、特に大変なことはない。荷物は極力増やさないように常に心がけているから、荷造りが大変だということはない。ただ、独身のときとは違ってそれなりに荷物は増えているから、多少は大変になるかもしれないけれど。



引越しの準備として最初にすることは、不要品の処分だろう。「引越し」イコール「要らないものを捨てること」と言ってもいいくらいに、引越しでは大量にゴミが出る。「ゴミ」という言い方はかなり愛情のない表現になってしまうけれど、実際に引越すとなると、いつ何の目的で買ったのかさえ思い出せないような不要品がゴロゴロと出てくる。本当に、買ってから一度も使っていないようなものが大量に出てくるのだ。

買ってから一度も使っていないものを不要品として捨てるというのは、かなり心が痛む行為だ。捨てる前に、なんとかして有効利用できないものかと頭を悩ませたりするけれど、そもそも必要がないからこそ、ずっと捨て置かれていたわけだから、あわてて使おうとしてもうまい用途は思い浮かばない。だったら、なぜそんなものを買ってしまったのだろうということになるけれど、それがわかれば苦労はしない。

しかし、ものを捨てるという行為には一種の爽快感もあって、それほど嫌いではない。自分は、いま流行りのミニマリストほどではないけれど、常に身軽でいたいとは思っている。大きな荷物が増えることにある種の恐怖感みたいなものを抱いていて、独身の頃は本当に必要最低限のものしか置かないようにしていた。

具体的には、洗濯機もなかったし(コインランドリーに通っていますた)、冷蔵庫はビジネスホテルによくあるようなごくごく小さなヤツを使っていたし、テーブルやベッドやタンスといった大きな家具もなかった。テレビも、テレビ台なんて使わずに床に直置きだったし、収納も簡易なカラーボックスだけで済ませていた。ついでに言うと、カーテンすらなかった。

なんと言えばいいのかよくわからないけれど、部屋の中に置いてあるものが増えると、心と体がそれに縛られてしまい、身動きできなくなってしまうような感覚が嫌いなのだ。とにかく、常に身軽でいたいと思ってしまう。つまりは、いまの場所に落ち着きたくないという気持ちが常に心のどこかにあるということだろう。それこそ、死ぬときにはパンツ一枚で死ぬのが自分の理想だ。いや、パンツすらなくてもいいかな。

なんだか前置きが長くなってしまったけれど、引越しの準備として、漫画の単行本を処分することにした。それは「まんが道」というタイトルの漫画だ。これは藤子不二雄Aの作品で、手塚治虫を崇拝していた作者が、同じ志を持った藤子F不二夫と出会って漫画家を目指す過程を描いたものだ。自分はとにかくこの作品が大好きで、そのあたりについてはこの覚書を読んでください。

今回処分することにしたのは、本編の「まんが道」ではなくて、続編の「まんが道」のほうだ。本編のまんが道に比べて、続編のまんが道はイマイチ面白くない。というか、まったく面白くない。しかし、続編の巻末には、テラさん直筆の手紙や、安孫子先生の手書きの日記など、いまとなっては貴重な記録が付録として収録されていて、まんが道マニアとしては、かなり付加価値の高い作りになっている。

まんが道の続編であるこの「まんが道 愛...しりそめし頃に」は全12巻で、普通の単行本よりもかなりサイズが大きい。定価で買うと1冊1,200円もする。自分は、ネットで中古品を買ったのだけれど、全巻買うのに1万円近くかかったような覚えがある。しかし、内容的には本編の「まんが道」には遠く及ばないが、付録だけは興味をそそられる。本編が「すごく面白い小説」だとすれば、続編は「貴重な資料が展示された博物館」みたいな感じだ。

ということで、本編を手放すつもりはないけれど、続編についてはこれから読み直すこともないだろうと思ったので、リサイクルショップに売ることにした。ネットで調べてみると、そういうリサイクル店の最大手であるブックオフの評判が最低なので、ほかの店に持っていくことにした。自転車で1時間ほど走ったところにあるリサイクル店まで、「まんが道」続編の全12巻をママチャリのカゴに入れて走った。

実はその店は、本編の「まんが道」を全巻買った店で、ちょっとした思い入れがある店だった。当時、まんが道を全巻手に入れたいと思っていた自分は、近所の古本屋やリサイクル店をいろいろと覗いていたのだが、一向にまんが道を発見することができなかった。そんなときに、まんが道の全巻を発見したのがその店だったのだ。

この店ならば、自分の思いが詰まったまんが道の続編を高く買ってくれるに違いないと考えて、暑い中、ママチャリを漕いだ。買い取りカウンターで、「買い取りをお願いします」と告げると、「査定しますから、呼ばれるまでお待ちください」と言われ、店内をあてもなくフラフラと見て回って時間をつぶした。なにしろ「まんが道続編」が全巻そろっているわけだから、それなりの価格にはなるだろうという期待があった。

まんが道続編の定価は1冊1,200円だから、希望としては定価の1/10の1冊120円、それが無理でも1冊50円くらいにはなるだろうと期待していた。しかし、「査定が終わりました」というアナウンスを聞いてカウンターに行ったところ、「120円になります」と言われた。その瞬間は、買い取りするにあたって手数料として120円が必要になるのかなと思った。

しかし、目の前に出された紙を見ると、買い取り価格として120円と記載されている。マジかよ。1冊たったの10円ってことかよ。おいおい、そりゃないだろ。

この店はまんが道の価値を評価してくれる店なんだと勝手に思い込んでしまった自分がバカだった。こんなことなら、ネットで売りに出せばよかった。ネットなら、まんが道の価値を高く評価してくれる人がそれなりの値段で買ってくれたかもしれない。

ということで、120円で売るのはバカらしいから、このまま売らずに持って持って帰ろうかとも思ったけれど、この大荷物を持ち帰るのもおっくうなので、結局はそのまま売ってしまった。

暑い中を1時間もかけてママチャリを走らせたので、のどが渇いた。リサイクル店の表に自販機があったので、手にしたばかりの120円で、三ツ矢サイダーのレモン味を買って一気飲みしてやったぜ。というか、藤子不二雄A先生、すみませんでした。まさか元値の1パーセント以下で買いたたかれるとは思っていませんでした。でも、本編のまんが道だけは、これからも大事に読ませていただきます。



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