18/06/03

「ショーシャンクの空に」の感想を語る

まだマンションの買い手は決まっていないのだけれど、奥さんが実家に引越したので、いまは無駄に広い80平米の空間を独り占めしている状態だ。一気にいろんなものがなくなった空間に自分だけ取り残されるというのは、実際に経験してみると、予想していた以上に胸に突き刺さる。とりあえず、マンションの買い手が決まって自分が引越すまではこの状態が続くわけなので、まずはこの状況に慣れないといけない。



ということで、掲示板で「脱獄モノならショーシャンクがいいよ」というお勧めがあったので、図書館のDVDを予約したのだが、一向に「予約した資料の準備ができました」という連絡が来ない。予約が殺到しているならともかく、予約しているのは自分だけなので、すぐに準備ができてもいいはずなのに、結局は予約してから一カ月以上が経過してようやく借りることができた。

図書館の資料の貸出期限は、書籍にしろCDにしろDVDにしろ一律2週間なので、期限がきたらちゃんと返してほしい。だれも興味がないような書籍やDVDならともかく、おそらくはかなり人気があると思われる「ショーシャンクの空に」を一カ月以上も平気で延滞するなんて、ちょっと理解できない。観終わったらすぐに返せよ、このバカチンが! ジリジリしながら待っている人間がここにいるんだぞ!

そんな感じで、ようやく「ショーシャンクの空に」を観た。スティーブン・キングの原作は読んだことがあるけれど、映画は観たことがない。原作を読んだのはかなり前のことなので、ストーリーについては断片的にしか覚えていない。原作を読んだときの感想としては、キングの作品にしてはホラー的な要素が皆無だな、ということを思ったくらいで、特に強い印象はなかった。

なにしろ、原作を読んだのはだいぶ前のことなので、ストーリーについてはほとんど忘れてしまった。覚えているのは、終身刑の罪で刑務所に入れられた主人公が、ゲイの服役囚たちに狙われて大変な思いをして、なんだかんだの末に下水管を通って脱獄した、というくらいのことだ。そんな感じで印象が薄いということは、自分の好みに合った作品ではなかったということだろう。

という予備知識を踏まえてDVDを観たところ、やっぱりイマイチ入り込めなかった。いや、つまらなかったというわけではなく、十分に面白かった。ラストはちゃんとハッピーエンドになっているし、悪役たちにはしっかりと裁きが下っているしで、キッチリとカタルシスを感じられる作りにはなっているけれど、激しく面白かったという感じでもない。

なぜイマイチ面白くなかったのかを考えてみると、結局のところ、リアリティに欠けているからというのが一番の理由だと思う。これが、超娯楽大作みたいな映画だったら、すべてご都合主義の展開でもかまわないけれど、「ショーシャンク」はそういったお気楽な映画とはちょっと違うから、感情移入するためにはそれなりのリアリティが必要になる。

自分が気になったのは、凶悪犯ばかりが収監される刑務所で、なぜ転房というシステムがないのかということだ。日本の刑務所だったら、20年間もずっと同じ独房に同じ受刑者を収監するなんてことはあり得ない。脱獄などの不正行為を未然に防ぐため、定期的に房を移動させるのが普通だ。もし、これがアメリカの刑務所で実際に実施されているシステムだとしたら、あまりにもずさんすぎる。

それに、ポスター1枚くらいで、あんなに大きな穴を隠しきれるとは思えない。あれほど大きな穴を開けたわけだから、当然空気の流れは変わるわけで、穴が貫通した瞬間にビル風みたいな突風が吹く可能性は十分にあると思う。むしろ、穴が貫通しても何も起こらないという状況は不自然だ。とにかく、映画であの大きな穴を見た瞬間に、「いやいや、いろんな意味でこれはありえないだろ」と思った。

だいたい、あのポスターはどうやって貼り直したのだろうか。脱獄するときに、独房の外側からあれほどきれいに貼り直すことができるだろうか。ポスターの3つの隅だけを壁に貼り付けてから穴に入り込み、独房の外側から残りの1つの隅をなんとかして貼り付けた、というのであればまだ納得できるけれど、映画を観る限りでは、四隅どころかポスター全体がきれいに壁に接着されていたように見えた。

それよりも気になったのが、刑務所の所長が20年間ずっと変わらないということだ。もちろん、ずっと同じ刑務所長を登場させて極悪非道な人物として描くことにより、主人公の脱獄劇をよりドラマチックなものにしようという意図は理解できるけれど、20年間もずっと同じ人間が同じ刑務所の所長を務めるなんて、絶対にありえない。少なくとも、日本だったら絶対にありえない。

20年もの長きにわたって転房もなければ所長も変わらないし、大きな穴があいてもだれも何も気づかないなんて、あり得るわけがない。自分は、こういう細かい矛盾が気になってしかたない性格なので、「あれ、これはおかしいよね」ということに気付くと、それから先はストーリーに入っていけなくなる。ということで、「ショーシャンクの空に」は、ちょっとだけリアリティがない映画だね、という結論に達した。



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