18/05/20

罪を犯すということ

先週、千葉市稲毛区の居酒屋で家族4人が刃物で切り付けられ、6歳の女の子が死亡したという事件を覚えているだろうか。この事件が発生したのは13日の夜だったから、ちょうど一週間前ということになる。最初にこの事件のことをニュースで見たときには、自分が住んでいる稲毛で殺人事件が発生したということで、ちょっと驚いた。

しかしそのときは、駅前のあの店で事件が起きたのかと思ったくらいで、特に深く興味を持つということはなかった。これが通り魔殺人とかの事件だったら、かなりの衝撃を受けただろうけれど、どうやら身内で起きた事件のようなので、まあそういうこともあるんだろうとしか思わなかった。ところが、犯人が逮捕されて実名が報道されたときには、ちょっとばかり驚いた。

犯人の小田求という男子は、自分が直接知っているわけではないけれど、知り合いの知り合いなので、まったく知らない人というわけでもない。まあ、その知り合いというのは自分の奥さんなんだけれど、奥さんの妹さんの同級生が小田くんということで、プロのオペラ歌手である小田くんが自宅で開催するミニコンサートなどにも姉妹で何度か出かけていたらしい。

その頃はなかなかのイケメンで、さわやかな好青年という印象だったようだ。しかし何を思ったのか、2009年に民主党から市議会議員選挙に立候補して当選してしまう。当時は民主党政権が誕生したばかりの頃で、その勢いに乗って当選したという感じが強かった。もしかしたら、自分が民主党から立候補しても当選したんじゃないかと思うくらいに、当時の民主党には勢いがあった。

駅前に立って、自分のニックネームである「オダキュー」を連呼していたことを覚えている。市議会議員選挙くらいなら、下手に政策を訴えるよりも、自分の顔と名前を覚えてもらった方が効果は高い。なので、ただひたすらに「オダキュー」を連呼する小田くんの作戦は、初めての選挙戦にしてはなかなか的を射た作戦だなと思った。

しかし、2010年に起きた中国漁船衝突事件での民主党政権の対応に幻滅した小田くんは、民主党から離党してしまう。民主党ブームにうまく乗って当選したのに、なんだかドライだなと思わないでもなかったけれど、けっこう右寄りな思想を持っているのかなと思って、少しだけ好感度が上がったのも事実だ。関係ないが、いまから考えると、あの事件が民主党政権崩壊の始まりだったのかなという気がする。

市議会議員時代も、駅前で「オダキューです」と連呼している姿を見かけることはたまにあったけれど、気付いたらまったく姿を見なくなった。駅前に立っている姿で一番印象に残っているのが、母親と二人で立っている姿だ。いい歳をした男子が母親と一緒に選挙活動をするというのはさすがにどうなんだろうと思った。かえって逆効果になるんじゃないだろうか。

結局、小田くんは市議を2期務めて辞めてしまった。詳しいことはよくわからないが、議員時代に精神面をやられたらしく、そこからいろいろとおかしくなってしまったようだ。2013年には、自宅で父親に暴力を振るい、母親が警察を呼んだこともあったらしい。議員を辞めた後は沖縄に行っていたというが、どういう目的で沖縄に住んでいたのかはよくわからない。

それにしても、逮捕時の小田くんの姿には驚いた。まったくの別人かと思うくらいに風貌が変わっていたのだ。薄ら笑いを浮かべる表情には、議員時代のさわやかさは微塵もなく、本当に犯罪者の顔つきに変わっていた。わずか数年の間にあれほど風貌が変わってしまうなんて、いったい何があったのだろうか。精神が崩壊するくらいにショックなことって、どんなことだろうか。

ということで、小田くんの事件は千葉地裁で裁かれることになるだろう。殺人という重大事件だから、裁判員裁判になる可能性が高い。その場合は、一週間くらい集中して裁判が行われるだろう。裁判員裁判の公判スケジュールは千葉地裁のホームページで公開されるから、すべて傍聴するのは無理としても、一日くらいは都合をつけて裁判を傍聴してみようかと思っている。

それにしてもかわいそうなのは、小田くんの両親だ。もちろん、被害者家族も災難だったけれど、今回の事件で一番辛い思いをしているのは両親だろう。特に、一緒に選挙運動をするほど息子のことを愛していた母親の気持ちを考えると、なんとも言えない。プロのオペラ歌手で、市議会議員でもあった小田くんは、きっと自慢の息子だったに違いない。

それが今度は、被告の母親として証言台に立つことになるのだ。被害者が身内だったことがせめてもの救いかもしれない。裁判を傍聴するたびに思うのが、罪を犯すということは、自分だけ嫌な思いをすればいいのではないということだ。家族や親族は、自分よりもっと辛い思いをすることになる。証言台に立つ被告の親族を見るたびに、自分は絶対に罪は犯さないぞという気持ちになるのだ。



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