18/04/08

英検の思い出

ネット上でニュースをチェックしていたら、「国の英語力目標 中高の生徒・教師ともに達成できず」というタイトルの記事が目にとまった。短い記事なので、以下に全文を掲載しておく。



政府が英語力向上のため、昨年度までとして立てた目標を中学校、高校の生徒と教師ともに達成できませんでした。文科省外国語教育推進室・金城太一室長:「生徒の英語力、また教師の英語力、いずれも目標に達成しなかったことを厳しく受け止めたい」

政府は2013年度から昨年度までの英語力向上の目標として、中学校で英検3級程度以上、高校で英検準2級程度以上の生徒をそれぞれ5割以上にするとしていました。しかし、中学校は40.7%、高校は39.3%で、2013年度と比べると8ポイント以上、増えているものの、いずれも目標に達しませんでした。また、教師の英語力についても英検準1級程度以上を中学校で5割、高校は75%としましたが、中学校で33.6%、高校で65.4%といずれも目標を達成できませんでした。

英語力に関して、こうした具体的な目標が掲げられていたというのは知らなかった。ちょっと驚きだ。中学生の半分以上が英検3級取得を目指すというのは、かなり高い目標だと感じるのは自分だけだろうか。実際の目標達成率は約4割ということだけれど、十分に高い数字だと感じるのは、やっぱり自分だけなんだろうか。

そもそも、5年前と比べて8ポイントも上がっているということがすごい。本当かな、ちょっとごまかしてるんじゃないの、みたいなことを考えてしまうくらいの伸び率だと感じるのは、やっぱり自分だけなんだろうか。教師の英語力についても、高校の英語教師の3人に2人が英検準1級を持っているというのは、けっこうな数字だと思う。

恥ずかしながら、英語のプロとして仕事をしている自分は、英検4級しか持っていないのだ。英検4級は、中学2年のときに取ったと思う。10人くらいの同級生とともに、土曜日の放課後に教室に集まって試験を受けたような記憶がある。クラスの全員が試験を受けたわけではなく、ある程度英語が得意な生徒だけが自主的に試験を受けたのだと思う。

その試験でいまも覚えているのが、リスニングの問題だ。「Bob, please take a picture for us」みたいな英文が流れて、「What did Bob use ?」みたいな質問文が流れた。解答用紙には、(1) pen、(2) brush、(3) camera、(4) board という選択肢が書かれている。「picture」イコール「絵」と即断した自分は、「pen」と「brush」で迷ったが、きっと水彩画だろうと思って「brush」を正解として選択した。

試験が終わった後で、何人かで集まって試験についてあれこれ話したのだが、このリスニングの問題がどうにも引っかかっていた自分は、「あの問題の正解って"brush"だよね?」と確認したところ、私もそうだと思うという答えが返ってきて安心した。しかし、いつも自分と成績トップを争っていたメガネ女子が、「それは違うと思う」と言ったのだ。

内心うろたえながら理由を尋ねると、「だって、"take a picture"だから"写真を撮る"っていう意味だよね。だったら正解は"camera"になるんじゃない? "brush"が正解なら、質問文は "paint a picture"になるはずだよね」と言われてしまった。このときは、まさにぐうの音も出なかった。数学は苦手だったけれど、英語だけならクラスのだれにも負けないと思っていただけに、プライドがズタズタにされてショックだった。

次に英検を受験したのは、本格的に英語の勉強を始めてから半年くらい経った頃だった。たしか、27歳のときだったと思う。どれくらい力がついたのか試してみようと思い、準1級を受験した。一次試験はなんとかパスして二次試験に臨んだのだが、事前の準備はなにもせずにぶっつけ本番で試験会場に乗り込んだ。心の中では、まず合格はないだろうなと最初からあきらめていた。

しかし、いざ試験が始まってみると、自分なりにかなり頑張って英語を話すことができた。これまでの51年間の人生を振りかえってみても、このときが一番真剣に英語を話した瞬間だったと思う。もちろん、外人さんに道を教えたり、居酒屋で隣り合った外人さんとちょっとした会話を交わしたりしたことはあったけれど、本当に二言三言くらいのもので、この試験のときほど長く話したことはなかった。

結局は不合格になったけれど、「不合格A」という判定だったから、それなりに合格には近づいていたということだ。まあ、自分としては一次試験さえ合格できればそれでいいと思っていたから、この結果にショックを受けることはなかったけれど、どうせなら合格したかったというのも本音だ。英検準1級なら、履歴書に書いてもそこそこのアピールにはなるしね。

次に英検を受験したのは、いまからちょうど10年前のことだ。何を思ったのか英検1級を受験したのだ。一次試験は余裕で受かったけれど、二次試験は予想通りに余裕で落ちた。なにしろ、開始早々「すみません、ギブアップします」と言ってそのまま退室したのだ。さすがにこれには試験官たちもちょっと驚いていた。自分の次にスタンバっていた受験生も、予定時間よりも大幅に早く呼ばれて驚いたことだろう。

ということで、英検については中学2年のときに受けた4級に合格したきりで、それ以降は一度も合格していない。なので、高校の英語教師の3人に2人が英検準1級を持っているというのは、実はけっこうすごいことなんじゃないだろうかと思っているわけだ。このニュースの数字を信じるのであれば、日本人の英語力は着実に上がっているということなる。素晴らしいことではないだろうか。

でも、実際のところは、英検を受験する人数が増えたというだけのことで、英語力自体はほとんど変わっていないのだろうなという気がする。この数字の伸びというのは、英検なんて受ければ受かるけど、特に興味ないし、という生徒たちに無理やり英検を受験させた結果なんじゃないだろうか。5年前と比べて8ポイントも上がっているなんて、どうにも嘘くさい気がしてしかたない。



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