18/02/18

噴飯ものの誤訳を紹介してみる

それにしてもすごいな、ゆずくんは。漫画やドラマでも、ここまでドラマチックな展開はそうそうないだろう。オリンピックが始まる前から、ケガの状態を含めてずっと注目され続けて、ものすごいプレッシャーがあっただろうに、見事に金メダルをとってしまった。競技が始まる前から、かなり強気な発言をしていたけれど、顔に似合わず、ものすごく精神力が強いのだろう。そりゃあモテるのも当たり前だ。

そんな前振りとはまったく関係なく、今日は仕事中に見つけた噴飯ものの誤訳をいくつか紹介してみたい。文字通り、飯を食べているときだったら、思わず吹き出してしまいそうなとんでもない誤訳というのはけっこうあるもので、同じ翻訳者としては、とんでもない誤訳を見つけてただ笑っているだけでいいのかな、などと考えてしまって、ちょっと複雑な気分だ。

For example, entering "reportedby=steve.jobs apple" displays jobs that user Steve Jobs has reported that also contain the word apple in the description.

これは、コマンドの機能を説明した文章で、ジョブを検索するためのコマンドなんだなということはすぐにわかる。

たとえば、「reportedby=steve.jobs apple」と入力すると、ユーザー Steve Jobs がレポートしたジョブを表示し、また、その記述に apple が含まれます。

これは、「that also」以下の意味がわからなくて、適当にごまかしたのだろう。なぜ、こんなに簡単な文章の意味がわからないのか、その理由がわからない。文章の中に「reportedby=steve.jobs apple」という答えが書いてあるじゃないか。コマンドに慣れていないとしても、ちょっと考えればその意味くらいはすぐにわかりそうなものだ。正しい意味は以下のようになる。

たとえば「reportedby=steve.jobs apple」と入力すると、「Steve Jobs」というユーザーがレポートしたジョブのうち、ジョブの説明に「apple」という単語が含まれているジョブが表示されます。

もう1つ、この訳文のマズいところは、ユーザーが行う操作とシステムが行う操作がどちらも能動態で書かれているということだ。「〜と入力すると、〜を表示し」とすると、入力操作と表示操作の主語が同じになってしまい、ちょっと混乱してしまう。このあたりのことに気を使わない翻訳者というのは非常に多くて、能動態と受動態を使い分けるだけでずっと読みやすい訳文になるのにと、いつも思ってしまう。

This section exists only after there are brokers and the code to update the Client policy is executed.

このセクションはブローカーがある場合にのみ存在し、クライアントポリシーを更新するコードが実行されます。


これは、「after」の係り先を「broker」だけだと勘違いしたために、まったく意味の通らない文章になっているというパターンだ。まあ、少しわかりくい原文であることはたしかだけれど、それにしても、これほど意味の通らない文章を書いて平気でいられるというのも、けっこうな精神力だ。自分だったら、こんなに恥ずかしい訳文を書いて公開するなんてことはできない。正しい意味は以下のようになる。

このセクションは、ブローカーが存在している状態で、クライアントポリシーを更新するためのコードを実行しない限り、システム上には作成されません。

「exist」を単純に「存在する」と訳しても、おそらく読者には伝わらないだろうから、「システム上に作成される」と意訳してみた。「only after」は、自分にとってちょっと苦手な表現で、普通に訳すならば「〜して初めて〜になる」とするところだけれど、なんだかいかにも翻訳臭のする表現なので、あえて逆のパターンで訳すことが多い。

Starting with Product A version 1.5, Product A has its own policy set within the configuration file.

製品 A バージョン 1.5 を開始すると、製品 A には独自のポリシーセットが構成ファイルの中にあります。


これは本当に噴飯ものの誤訳で、これまでに出会った誤訳の中でも、トップクラスに位置する誤訳だ。「構成ファイルの中にあります」という部分があまりにもシュールすぎて、何度見ても笑ってしまう。これは、「Starting with」の「with」を見落としてしまったために起きた誤訳だけれど、それにしてもあまりにもひどい。機械翻訳だって、こんなにシュールな訳文は作らないだろう。正しい意味は以下のようになる。

製品 A バージョン 1.5 以降、構成ファイル内に製品 A 専用のポリシーセットが追加されました。

ということで、自分のことは棚に上げておいて、安全な場所から噴飯ものの誤訳を紹介してみたけれど、機械翻訳の精度が急激に上がってきている現状を考えると、笑ってばかりもいられない。機械翻訳にすら劣るような訳文を書く翻訳者がゴロゴロいるという現状は、憂うべきことではあっても、決して笑って済ませていいことではない。だけど、やっぱり笑っちゃうよね。



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